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PS ヒーロー始めました。  作者: くずもち
スライムの山編
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魔人の力

「イヒヒヒヒ! さてどうだ? 少しは綺麗になったかな? ……うん? なんだお前は?」


 元のピエロに戻ったガムガム魔人は爆発の衝撃波で無事な一角にようやく目を向ける。


 そこには沢山のスライム達と、もちろんツクシの姿があった。


「フン。痛そうな攻撃だな!」


 ブオンと聖剣を振りかざす、パワードスーツを着込んだツクシは平然とスライム達を守りきり立っていた。


 どうやったのかは知らないがこういうところをキッチリ決めてくる辺りさすが勇者だ。


 ツクシはガムガム魔人に狙いを定めて、聖剣の刃を向けた。


「さぁ! スライム達の平和を乱す悪党! この聖剣仮面が成敗してくれる!」


 名乗りを上げるツクシに、ガムガム魔人はやれやれと肩をすくめていた。


「聖剣仮面? なんだその間抜けな名前?」


「間抜けじゃない! ガムガム魔人に言われたくないぞ!」


「……ほほう。言ってはいけないことを言ったぞちびっ子?」


「先に言ったのはそっちだ!」


 ぐぎぎぎと聖剣仮面とガムガム魔人がにらみ合う。


 大いにやる気を出していたが、まぁどっちもどっちだった。


 だがこれでこの事件もすぐに終わるだろう。


 勇者ツクシが負けるわけがない。煽れば煽るほど決着が早まるだけだ。


「あいつ、死んだな」


 つい口から洩れた言葉は、まぎれもなく本音だった。


 だけど我ながらなんかのフラグっぽいなと思わなくもなかったが、些細なフラグくらいやすやすとツクシならへし折ってくれるはずである。


「まったく……口の悪いちびっ子め。言っておくがお前じゃボクには勝てんよ?」


「やってみなくちゃわからん! 行くぞ!」


 ツクシがそう宣言するとパワードスーツのバックパックから光が漏れ出した。


 そしてツクシの体が一回り大きく成長したところで、周囲のスライム達がざわめき液状の体が躍りだす。


 俺は手に持ったライムが小刻みに震えているのを感じていた。


「おおお……素晴らしい。さすがは神様」


「どうした?」


「あまりに強大なスライムパワーに圧倒されていました! 素晴らしいですツクシ様!」


 戦闘になればスライムパワーとやらも強く感じるものの様だ。


 ツクシが動く。


 なんとなくそう思った時には、聖剣は振り切られていた。


 まったく目で追えないスピードで、ガムガム魔人に肉薄するツクシはさすがである。


「……それで終わりか?」


「!」


 だが真っ二つになったかに思われたガムガム魔人は痛みを感じている様子もない。


 その体はぐりゃりと剣の軌道をなぞるように曲がっていた。


「ヒャッハ!」


 更に振ったガムガム魔人の右腕は、鞭のように伸びてツクシに襲い掛かった。


 ツクシは聖剣で弾くが、バチンと派手な音がして空中で弾き飛ばされる。


「……」


 ツクシはにぎにぎと聖剣を持っていた手を確認し、ぼそりと呟く。


「よし……あれやってみよう」


 すると今度はツクシの体が小さく戻ってしまった。


 俺にはいったい何をするつもりなのかわからない。


 まさか戦意を喪失したのかと驚くがそれは杞憂だった。


「おいおい! もう終わりか! 歯ごたえが―――」


 ガムガム魔人の方もすぐに挑発が途切れた。


 それは、聖剣の刃に集中するように強くなって光る球体になりどんどん大きくなっていたからだ。


 ツクシはそのままハンマーの様にそれを振り上げる。


 ものすごい勢いで膨れ上がり続ける光の球は、気が付けば見上げるほど巨大化していた。


「な、なんだそれ……」


 始めてみる聖剣の使い方で、俺は思わず口に出した。


 振り下ろされた光の球体は、パワードスーツで増幅された力でピエロ姿のそれを押し潰した。


 それだけでは終わらず、聖剣を中心として地面が大きく陥没して、一撃ですり鉢状の地形が誕生していた。


「おお! やっぱすごいなこの鎧! リッキーやるなー」


 バシュっと全身から蒸気を出しつつ喜んでいるツクシは俺に手を振って来るが、俺には何が起こったのかわからなかった。


「テラさん……今ツクシは何をしたんだ?」


 見ていたであろうテラさんに解説を求めると、テラさんから解説が返って来た。


『おそらく、本来肉体に回していた分のエネルギーを聖剣に回したのでしょう。パワードスーツさえあれば並の人間以上に武器は振れます』


「新戦法ってわけか……やばいのか?」


『やばいです。ツクシの力をすべて攻撃として聖剣に集めたエネルギーの塊です。あの状態の聖剣に触れれば我々のパワードスーツもただではすみません』


「マジでか……き、気を付けることにしよう」


 なんだが恐ろしい話を聞いてしまったが、味方の今は心強い。


 そして相変わらず頼りがいのある力は、見事敵に命中したようだった。


「だけどこれで本当に終わりだな。さすがに今のを食らったら……」


「まだです! 神様!」


 だがライムは俺の腕の中から飛び出して叫ぶ。


 まさかと目を凝らすと、俺も群れを成して飛ぶタブレットが空中に集まっていくのを目撃した。


「ふぅ……今のは驚いた。だがね、やっぱり体の硬い生き物じゃボクには勝てんよ。絶対に」


「む?」


 それは人型に戻ると、ニヤリと笑みを浮かべた。


 ガムガム魔人は特にダメージがある様子もなく、軽々と復活してみせたのである。


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