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PS ヒーロー始めました。  作者: くずもち
スライムの山編
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大いなるスライムソウル

「……これは一体何なんだ?」


「はい! これは神様を讃えるお祭りです!」


「だから、なんで神様なんだ……」


 俺は茫然としながら呟く。


 話が決まり、神様参戦をライムが仲間に知らせた、そこまでは俺も理解できた。


 だがあれよあれよという間にスライム達がライム宅の洞くつに押し寄せて来て、ツクシが外の広場に運び出されると、それは脈絡なく始まった。


 ボヨンボヨン集まってきた大量のスライム達が山になってツクシを担ぎ上げていた。


 言葉にするとそれだけなのだが、目の前で実際に見てみると中々衝撃的な光景だった。


 ツクシが色とりどりのスライムの上で跳ねながら爆笑する姿は、ボールの入った遊具で遊ぶテンションの壊れた子供のようだった。


「あははははは!」


 スライム達の願いで、今ツクシはパワードスーツを着ていて、スライム達に担がれているわけだが、さっきから笑いっぱなしなのでご機嫌は幸いだった。


「みんな盛り上がっています。良いことです」


 ライムは俺の頭の上を定位置にして、これもまたよし! みたいな雰囲気を出しているわけだが、今一緊張感に欠ける光景であることは間違いない。


「……戦争中じゃなかったの?」


「いえいえ、士気向上に祭りは欠かせません。神様参戦は沈みがちだった山に力を取り戻してくれます」


「な、なるほど……」


 士気高揚と言われれば確かに、スライム達も心なしか大盛り上がりのようだった。


 だが見たまま担ぎ出されそうという言葉が頭をよぎったので、俺はあえて避けていた話題を口にした。


「ところで聞きたかったんだけどさ? いい?」


「はいなんでしょう?」


「何でツクシが神様なの? 俺達スライムじゃないよ?」


 ツクシは初対面に近い状況で祭り上げられてしまった。


 戦うというのなら現状をいつまでも放置しておくわけにもいかなくなって来たわけだが、ライムはちょっと興奮気味に語りだした。


「それはですね。スライムシュガーには、初代神様の大いなる魂が宿っていると言われています。だからシュガーを口にすると、スライムソウルを宿すことができるのです。我々にはスライムソウルがなんとなくわかるので仲良くなった相手には、スライムシュガーを振舞って仲間として友人関係を結ぶしきたりがあります」


「……なるほど」


 あの拾い食いが原因か。


 まぁ友好的に接触できたのだから結果的にOKなのだが、少し引っかかった。


「でも俺達もスライムエキスっていうのを食べただろう? あれもスライムシュガーが原料だって話だけど……俺達も神様なのか?」


「いえいえ。ですからシュガーは友好の証なのです。スライムエキスは貴方やお連れの方のために振る舞いました。ですがツクシ様は違います。初めて見たあの方は……しびれました。大いなるスライムパワーを感じます」


「……大いなるスライムパワーとは?」


 なんだか知らない単語が次々出て来て、そのどれもが胡散臭いと思ったのは秘密である。


「スライムパワーとは! スライムソウルを宿す者に備わるスライム的パワーです! 尋常ではないスライムパワーをあの衣装をまとったツクシ様から感じるのです! 例えるのなら、天空を走る雷の様な……とても大きな力です! だからツクシ様は神様です」


 おそらくはライムにしてみればとても感覚的にツクシを神様だと捉えているのかもしれない。


 人知を超えた……いや、スライム知かな? そういった何かをツクシから感じ取っている。


 ツクシに関していえば、俺もわからないではなかった。


「うーんやっぱ……勇者だからかなぁ? 怪しいが……でもスライムの要素なんてツクシにあったかな?……」


 俺はここまで口に出して、ようやく思い出した記憶があった。


 それはテラさんのセリフである。


 ツクシ用に改造を施されたパワードスーツの動力源は、何だと言っていただろうか?


「スライムバッテリー……!」


 思わず呟いて俺は口を押える。


「何か言いましたか?」


「いや……何でもない」


 ライムに聞かれた俺は、ひとまずとぼけた。


 なるほど、神様云々の謎は解けた。


 だがあえて語ることもないだろう。


 神様に祭り上げられるなんて言うのはいかにも厄介そうではある。


 そこに後ろめたさを感じないこともないが、ツクシは笑顔で、スライム達も大いに盛り上がっていた。


 この場にいる誰もが幸せなのに、あえて不安の種をまくこともない。


「……まぁ祭りは大事だよな」


「はい! 大事なのです!」


 俺は、ツクシ神様問題からそっと目をそらすことに決めた。


 ただ俺はお祭り気分を壊さないように気を使ったというのに、楽しい時間はすぐに終わりを迎える。


 それは戦の始まる合図でもあったのだ。


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