爆発オチ
それは戦いと呼べるようなものではなかった。
シャリオ=メルトリンデは、炎は人類に与えられた最強の攻撃手段なんだなってことを見せつけるような戦いぶりで、雑魚モンスターを一掃。
巨大怪獣の硬質な装甲をたやすく融解させた。
ツクシもとい、聖剣仮面は言うに及ばすバッと現れてサクッと斬り飛ばして解決していった。
少しは善戦しただの、俺達はよくやっただのそんな言葉が入る余地すらない。
つまり俺達は壊滅した。
「何じゃこの理不尽な強さは! ええい! こうなったら最後の手段じゃ!」
そしてぽちっと。
追い詰められて暴走したドクターダイスはあるボタンを押したわけだ。
ある意味では定番のそのボタンは、何もかもをうやむやにしたのである。
「ドクターダイス……あの爺さん。今度会ったら文句言ってやる」
杖を突きながらなんとか逃げ延びた俺は、キャンピングカーを目指していた。
歩いてきた後ろをちらりと確認すると、そこには空高く舞い上がる粉塵が確認できた。
「まさか自爆ボタンとは……本気で用意してるんだから徹底してるわ」
しかも自爆したのは怪獣ではなく基地そのものだった。
タカコのやつは巻き込まれなかっただろうか?
その規模は相当大きく、地下にあった基地は丸ごと潰れたと思われる。
何もかも吹き飛んでしまったが、全てをうやむやにしたのは俺にとっては都合がよかったかもしれない。
おそらく他のやつらは残らず生きていることだろう。
キョウジ辺りはちょっと怪しいが、俺のダメージも思ったほどではない以上何らかの仕掛けがあったのかもしれない。
「なんにせよ……生きててよかった」
そしてなんだかとても久しぶりに思える拠点にたどり着くと、そこにはキャンピングカーが健在で、中からひょこりと外の様子をうかがっていたタカコも確認できた。
「あれ? ダイキチさんですか? なんかボロボロで何やってるんですか?」
あまりにも普通な対応に、ほっとした以上に色々と辛い。
俺はふらつきながら絞り出すように答えた。
「……色々あったんだ。本当に色々と」
「こっちだって色々ありましたよ! 探したんですから! 爆発したんですよさっきなんて!」
そりゃそうだろう。俺は爆心地にいたわけだし。
ドクターダイスが出てきた時点で、なんかもっと適当なもんだと思ったがとんでもない。
今回失ったものは多く、ツッコミが追いつかなかった。
特にツクシのパワーアップの仕方にはかなり色々物申したい気持ちでいっぱいである。
「追いついたと思ったらスキップ並みに軽やかに引き離されるこの感じ……結構きつい」
技術ってやつの厄介なところはやろうと思えば誰でも使えるところにあるらしい。
「ぐふっ」
ついに力尽き、どさりと倒れた俺にタカコは慌てて歩み寄る。
「だ、大丈夫ですか!」
「…………大丈夫じゃないかも」
もう少ししたら復活するから、ちょっとだけ待ってほしい。
俺は今日も異世界に試されていた。