炎の死神がやって来る
その絵面は最悪だった。
抗うすべのない女性に対するはメタリックな改造モンスター軍団という、あまりにもあんまりなゼロ対百みたいな戦力差。
どう考えても一方的なワンサイドゲームは考えるだけでもかわいそうになって来る構図だった。
「ふっふっふ、これだけの戦力で上手くいかない方がおかしいですよ。どうやって殺さないようにするか今から考えておかなくては」
とはキョウジ氏の言葉である。
だが、現状不利というよりは有利かもしれない。
何せモンスターの司令塔の背後には俺がいて、一発殴ればそれだけでモンスターの統率は乱れるだろう。
操作系の能力は、守るべき壁がなければ悲惨だろうと思われた。
保険はあった。
いざとなれば即座に裏切り、状況はクルリと鮮やかに入れ替わる、大逆転劇である。
だが俺が裏切ったりする必要もなく。
可愛そうな方はくるりと入れ替わってしまったのだ。
まず最初に起こった異変は爆発だった。
モンスター達の進行方向がいいなり真っ赤に染まり、立ち昇る炎が見える。
「?」
おかしいな? そう思った瞬間衝撃波が吹き荒れて、俺達は連れていたモンスター達もろとも吹き飛ばされた。
「いったいなんだ!」
「どうなっている!」
悲鳴を上げて地面に転がった俺達は立ち上がる。
そして余裕に満ち溢れていたキョウジの顔色がいよいよ悪くなったのは、更に追い打ちの爆発がニ、三飛んできた時ではなく、爆心地から船にドリルの車輪がくっついた謎の乗り物が走って来るのを見つけた瞬間だった。
「あ、アレは……」
「……どうした?」
「アレは……ダメだ……」
ぽつりとこぼすキョウジ。
彼の表情は青ざめ、膝は震えて、大量の汗が流れ落ちていた。
一応逃げずにその場に立っていたが、動揺がモンスター達に伝わり、統率が乱れたあたり相当精神的ダメージは大きいようだ。
かく言う俺も、嫌な予感しかしない。
戦力ゼロなんてとんでもない。
どうやらタカコは、俺がいないわずかな間に、偶然にも戦力を整えていたようだった。
「やべぇーな。なんて運のいい奴なんだ」
まったく知らない異世界を渡り歩いてこれたのは、この豪運あったればこそなのかと俺は戦慄した。