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モンスターメタル化計画

「ハックシュン! ……誰かが噂でもしてるのか?」


 ズズッと鼻水をすすり上げ、まだむずがゆさの残る鼻をこする。


 しかしくしゃみと同時に背筋に走った寒気は、何か嫌な予感がしたが、今は完成した悪役仕様パワードスーツを喜ぶことにした。


「よし! いい感じじゃないか!」


 黒をメインに色調したパワードスーツは中々に悪的印象になった。


 尖った肩パットと角のパーツはより悪党感を引き立たせ、いつもは動力の光の漏れている部分はクリアレッドのフィルムで加工済みである。


 悪役なので、マフラーはやめて、今日の装備は赤いマントをメインにしておくとしよう。


 鏡を見てクルリとターン。


 その仕上がりに満足した俺は、さっそく自慢すべく自室から飛び出した。


「おおっといけないいけない。バタバタ走るのは悪役の美学に反する。いつも優雅に余裕をもっていかないとな」


『なにか妙なこだわりを感じるのですが?』


「こだわりなんてないって。当然のマナーでは?」


『そうでしょうか?』


 テラさんがちょいちょい疑いを抱いているようだが、これは仕方がない事なのだ。


 レストランで最低限のマナーを気にしているようなものだと理解してもらえれば幸いである。


 郷に入っては郷に従えと言うし、ここは一つ最低限の悪役っぽさでも醸し出さねば怪しまれるというモノだろう。


 俺はドクターダイスたちが作業をしているはずの研究室にたどり着くと自動ドアの先は、広い実験施設も兼ねた研究室で、薄暗い中白衣姿のドクターダイスとキョウジが目の下に濃いクマを作りながら固い握手をかわしてるところだった。


「やったな! キョウジよ! わしだけではこうも短時で成果を上げることは出来んかったぞ!」


「いやいや、こちらも感服するばかりですよ、ドクターダイス。貴方は天才だ」


 共同作業が一定の信頼関係を構築したらしい二人は何か成し遂げたらしく、疲労の中に達成感が見てとれる。


「調子は……悪そうだな」


 そう話しかけた俺に、ドクターダイスとキョウジは振り向いた。


 かなり真剣に何かに取り組んでいたらしい二人は、つい先ほど俺が完成した黒い鎧を見ていた時と似たような笑みを浮かべていた。


「おお、いい感じにモデルチェンジできたのぅ! 雰囲気でとるぞ!」


「なかなかのセンスですね。期待させていただきますよ」


「ありがとう。それで? 一体何をしていたんだ?」


 俺は思いの外素直に黒バージョンパワードスーツを褒められて気をよくした。


 うずうずしているのが分かっていたのでさっそく振ってみると二人は渾身のキメ顔でぽちりと怪しいボタンを押した。


 そのとたん床が振動し、数千にも及ぶカプセルが地面の下からせりあがって来る。


 培養液に満たされたカプセルの中にはメタリックな装甲で全身覆われた人型のモンスターが浮かんでいた。


「見たか! 鉱物と生物の融合ここに完成じゃ!」


「制御も完ぺきです。ひとたび動き出せば、彼らは我々の統率の元に完璧な軍団として機能するでしょう!」


「「素晴らしい」」


 声をそろえる悪党たちの言葉には、自信が満ち溢れていた。


「ホレ! なんか感想はないか?」


「そ、そうだなぁ。経験値とか高そうだよね」


「意味は分からんがそうじゃろそうじゃろ!」


 テンションの高いドクターダイスは、ポジティブな意味なら何でもいいみたいだった。


 実際言うだけのことはあって、ギラギラ輝くメタルモンスターの群れはまだ目を閉じている段階で相当の迫力があった。


「実験は成功じゃ。これなら……こいつを目覚めさせることもできそうじゃわい」


 そして更にドクターダイスがパチリと指を鳴らす。


 今度は何をするつもりなのかと身構えていたら、いきなり薄暗い研究室がライトアップされて一面だけむき出しの岩肌が露わになった。


 意味が分からなかった俺はしかし、ライトアップされた物を見て息を飲んだ。


「な、なんだこれは?」


 俺がつい声を漏らす。


 ドクターダイスはばさりと白衣を翻し、岩肌に溶け込む様に眠っている金属のようにも生物のようにも見える爬虫類型の巨大モンスターを声高に披露した。


「こいつがわしが見つけた鉱物生命体じゃよ! 実に凶暴そうな面構えをしておるじゃろう?」


 確かに凶暴そうな上、この巨体だと歩くだけでも相当に危険そうだった。


 あ、こいつは思っていたよりもずっとやばいことになりそうじゃないか?


 ほんの数日しか経っていないのに出来上がりつつある凶悪な軍団を前に、俺はこいつら今ここで叩くべきなんじゃないかと本気で迷ったのだが、タイミングよくその知らせはやって来る。


 ポンと音がして届いたデータは、すぐに俺達全員に届けられた。


 データの中には画像もあって、写真の一枚にはばっちりタカコの姿が写っていた。


 キョウジはそれを見て、クフッッと声をもらし、当然その願を口にする。


「では、作戦会議を始めましょうか? 次は私に手を貸していただけますよ?」


「……」


 本来であればこのまま暴れてもよかったのだが、作戦会議と言われて心惹かれる俺がいた。



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