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滝を見たら修行、これ常識である

 ドドドっと流れ落ちる水が俺の体を叩き続ける。


 滝つぼで座禅を組む俺は、驚くべき圧力に耐えながら自然の圧倒的な力を感じ続ける。


 集中し、開かれた感覚は、自然の中から体の中に流れ込む力の循環を手に取るように感じることができた。


 ふと我に返り、目を開けるとそこには心底怪訝な顔をしたタカコが俺を見ていた。


「……意味があるんですか? その滝に打たれるやつ」


 失礼な物言いに、俺は力強く頷いてやった。


「あるだろう。そりゃ。滝があったら修行するもんだ」


 修行と言えば滝に打たれる。これ常識である。


 旅先にいい感じに流れ落ちている滝があったなら試してみようと思うものだろう。


 そんなことは説明するまでもないと思っていたのだが、案外そうでもないらしい。


「そんな、当り前だろ? みたいな顔をされても常識じゃないですからね?」


「まぁ……滝行は初めてだったけどな?」


「初めてなんじゃないですか。意味ないですからやめましょうよ。焚火の燃料がもったいないです」


「いやいや、意味はあるぞたぶん。やっても見ないで憶測で語るのは感心しないね。これかなり疲れるし、筋力トレーニングにだってなってる。ダイエットにも効果があるぞ? 肩こりの改善にもよさそうだ」


「…………ダイエット。そうかダイエット」


 何やら心に響くようなフレーズがあったようだ。


 ぶつぶつと釈然としないながらもなにか考察していたタカコは、ふらふらとどこかに歩いて行った。


「うー……でも冷えるな」


 俺は用意していたたき火で体を温め、この修業は中々悪くなかったと振り返った。


 仙術が実用段階に入った今、こういう自然と一体になる修行は積極的に試してゆく所存である。


 だがだんだんと体が温まってくると頭も回り始めて、余分なところに気が付くようになってきた。


「そういや、タカコどこ行ったんだろ?」


 せっかくたき火があるのだから、食事でも取りに行ったのかと思ったが、すでに食事の後である。


 普段ならさして気にするようなことではないだろうが、俺の直感が怪しいと告げていたのだ。


「……よし。ちょいと探してみるか」


 体はまだ冷えていて、気刻みに震えていたが、だからこそのこのタイミングである。


 タカコの謎は未だに多い。


 自分の情報をすべて話していると思うのは楽観的過ぎるというモノだろう。


 俺はすぐに立ち上がり、周囲の気配を探ってみる。


 するとキャンピングカーの陰に気配を感じて、俺はこっそりと覗き込んだ。


 するとタカコはキャンピングカーの隅で、ペンダントから飛び出した地球儀のような立体映像を眺めながら頭を抱えていた。


「ううーん……お姉ちゃん、やっぱり新技術とか開発してない? 足跡が追えないんですけど……」


 これはビンゴっぽい。このまま見ているのもいいが、面白そうなので俺は声をかけてみることにした。


「何やってんの?」


「へぁ!?」


 ぎょっとしているタカコはすぐに何事もなかったかのように、立体映像を消す。


「え、えっと、何か見ました?」


 そう言ったタカコのニヘッとした笑みは、なんともあさましい感じがした。


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