緑の巨人の集落
のっしのっしと歩く緑の巨人はジャングルみたいな密林を進んでゆく。
どんどん険しくなる道はキャンピングカーで進むことは困難で、俺達はいったん歩いてついて行くことになった。
タカコは未だに気絶中。
ただ、現在その運ばれ方は中々スリリングである。
タカコは俺が車から引っ張り出してきたシーツにくるまれて、緑の巨人に担がれていた。
「うーん中々衝撃的だな……」
少なくともあの状態で目が覚めたら、俺なら食われる一歩手前だと思う。
でもしょうがなかったんだ。
タカコが驚いて気絶したと言うと、申し訳ないから自分が集落まで運ぶと謝られた上に頼まれたら断れないじゃん?
俺は心の中で謝っておいて、この問題はひとまず棚上げとした。
「ずいぶん奥に進むんだな」
気を紛らわせる意味もあって俺が尋ねると、緑の巨人からは楽しげな返事が返って来た。
「緑の民。森と共に生きるの当然」
「緑の民っていうのか?」
「そう。緑の民。森から日々の糧集める」
「そうなのか」
「そう。でももうすぐ着く。森の民の術集落隠す」
緑の巨人は案外おしゃべり好きで一度話すと、色々な話をしてくれる。
その中には興味深い話もかなりあった。
「ほっほう……ずいぶん不思議なことができるんだな」
森の民という彼らは、どうやら、王都の魔法とはまた違うことができるらしい。
これはいろんな意味で気に留めておくべき情報だった。
緑の巨人と雑談しながら背中を追うこと数分。
俺はふと体の回りにぬるま湯に入ったような感覚に包まれる。
感覚がなくなると、周囲の雰囲気は明らかに変わっていた。
空気が一気に澄んだような不思議な感覚である。
そして俺達が立っていた森の中は森の中であるが印象はまるで違う場所だったのだ。
まず植生がまるで違う。生えて樹木の太さが太くなり、緑の巨人が入れるほどの大きな樹洞が開いていて、それが彼らの家の様だ。
「ついたぞ」
緑の巨人はこちらを見てにこりと笑い。俺はこの不思議な現象に興奮を隠しきれなかった。
「おお……ここがそうなのか! すごいな!」
つい俺が声を上げると、集落にいた数人がビクリと反応してこちらを見る。
緑の巨人と同じような姿の彼らはとても強そうだが、こっちを見るなり、いきなり気絶して崩れ落ちた。
「ぬおおお! え? また気絶!?」
「……ゴメン。みんな気が小さい」
「そう言うことなの? こっちこそごめん!」
気絶させるつもりなんてこれっぽっちもなかったんだ。
俺は慌てて口を押えたが、この騒ぎでタカコが目覚めた。
「ううん……私はいったい……ぎゃあ!?」
もちろん緑の巨人に担がれた袋の中でだ。
首だけ外に出ていたタカコは目を覚ました瞬間、至近距離で緑の巨人と目があったらしい。
「なんか……ホントごめんな」
あっちもこっちも大変である。
とりあえず俺はもう一回気絶したタカコに今度は口にだしてちゃんと謝った。