異世界の日常は波乱に満ちている
「……うむ。大変な事をしてしまったかな」
『そのようです』
歯ブラシでごしごしと歯を磨きながら、テラさんと昨日のトップニュースについて語り合う。
オークの根城大炎上。
町ではそんな噂が囁かれている。
ちなみに俺は火をつけたりはしていない。
それをやったのは、噂の騎士団長。
灼熱のシャリオ=メルトリンデ嬢であるともっぱらの噂である。
名前は……うろ覚えだったが、灼熱と言えば頭に出てくる顔は一人だった。
燃え上がる真っ赤なドリルヘアーのお嬢様は、行動も魔法同様苛烈そのものらしい。
「あのお嬢様、すげぇことするよね」
『頭目を仕留めたマスターが言う事ではないかと』
「そりゃそうだわな」
なんにせよ。一つ戦いが終わった。
マフラー闘法は本番でも予想外に効果的だったし、魔力を吸収するという性質は俺の無駄魔力が初めて日の目を見た。
今まではやけに遠く感じた、魔法も、科学も、未知の可能性も今ではグッと俺の身近にある気がした。
さてここからどこまでやれるものかは、やってみなければわからない。
「ま、全部これからだ。スーツが動いた以上、これからの活動もどんどん考えて行こう」
『そうですね。そもそもヒーロー活動と言う物も随分漠然としたものですので』
「……そうね」
身も蓋もない事を言うテラさんに俺は渋い顔で一応頷いておいた。
コンコンと家のドアがノックされる。
俺は慌てて地下の扉に鍵をかける。
さて今日はいったい誰が来たのだろう?
扉を開けると、そこには赤いドリルヘアが揺れていた。
「ごきげんよう。よろしいかしら?」
「……はい。おはようございます、お嬢様。今日は何のご用でしょうか?」
俺は恭しく頭を下げる。
よし掴みはとりあえず紳士的に、店長風にいってみるとしよう。
俺が行動した結果、果たしてお嬢様はここに何しに現れたのか?
俺は今日もまた異世界に試されていた。




