数秒の間に起きた事故の数々
誰だこいつは?
そんな硬直は数秒だが、当人たちにしてみれば、十分すぎるほどに長い時間だった。
目標とは全く関係ない敵が現れた。
敵を待ち構えていた騎士達は現れるであろう敵の特徴が周知してあることでとまどい、襲撃する気満々だったキョウジは予想外の軍勢に頭が一瞬真っ白になる。
だがもとより臨戦態勢だった体は、ほとんど勝手に動き出した。
「ぬおおお!」
驚いたキョウジが最初に取った行動は、前もって準備していたものだった。
額に光が走り、視界の中の目標にナノマシンが飛んでゆく。
結果、目に入った数人の敵の意識を奪うことには成功したが、予想を超えた大人数すべてに効果などない。
その後は地獄である。
つつかれた爆発寸前の爆弾は、刺激に反応して爆発した。
「敵だ! 放て!」
「「「うおおおおお!!!」」」
号令によって城を守る兵士達から放たれた魔法は、地面から飛び出す無数の岩の槍となって、キョウジに襲い掛かった。
「ちょっと嘘だろ!」
キョウジは逃げようと後ろに下がるが、槍はどこまでも止まらない。
凶悪な槍衾は人間一人には過ぎた暴力をキョウジの体に叩きつけるべく、その切っ先を伸ばしてくる。
あ、死んだ。
キョウジは観念した。
しかしあわやミンチ寸前のタイミングで奇跡は起こる。キョウジが串刺しのオブジェになる前に、それは砕かれたからだ。
だがキョウジが救われたわけじゃない。
当人のキョウジには何が何だかわかるはずもなかった。
気が付いた時には強風の日の木の葉のように、空をくるくる舞っていたからだ。
「んが―――」
背後から城門を派手に打ち砕いた杭打機が、勢い余ってキョウジ諸共大魔法の槍を粉砕した。彼の身に起きたのは、そんなバカみたいな事故である。
蒸気が吹き荒れ、あきれるほどの衝撃波に巻きあげられる中、キョウジが最後に見たのは巨大な杭打機を持った角の生えた少年だった。