キョウジの災難
「ええい忌々しいですね……体中がまだ痛い」
キョウジは、目標を追ってたどり着いた街でイライラと歯噛みする。
科学者だった彼は、ある時世界を渡ってきた少女に出会い、その要であるペンダントを奪い取った。
元居た世界とは明らかに違う高度な技術体系から生み出されたとペンダントは様々な力を秘めていて、そのすべてをキョウジは手に入れようとした。
巧みに逃げ回る少女を追い詰め、タワーまで追い詰めるところまではうまくいった。
しかし二つのペンダントが力が共鳴し、キョウジはこの世界にやって来るはめになった。
それからは失敗の連続である。
たやすく済むはずだったペンダントの強奪は失敗し、それどころか手痛いしっぺ返しまで喰らってしまった。
「しかし何なんですか、あいつらは……どう考えても普通ではない」
タカコを守った白い鎧のヒーローもどきはともかく、後から出て来た燃える女はアレはやべー奴だ。
今後出来る事なら二度と出会いたくはないとキョウジは心からそう思った。
「だがあのやばい奴は、謎の乗り物? が瓦礫に埋めれていては、早々動けないはず。その間になんとかタカコを捕まえ、元の世界に戻らねば……」
キョウジは自分の持つペンダントを見る。
失敗の後一度はあきらめ元の世界に戻ろうと試みたが、どういうわけかそれは出来なかった。
キョウジはその原因を、スペアであるからだと考えた。
しかしタカコの持つオリジナルの力ならそれも可能となるはず。
キョウジは黒い髪をクシャリと掴み、屈辱の記憶を腹の奥底に沈め直した。
タカコ達はおそらくキョウジが死んだと思っているはず。ならば今こそがタカコに接触するチャンスだ。
現在、タカコは謎の協力者から距離を置いたことをキョウジは把握済みだった。
彼の操る極小の小型ロボットは脳波でキョウジとつながっていて、彼の意のままに動かすことができる。
ナノサイズのロボたちはたやすく視認できるものではなく、大雑把にだが周囲の状況を把握することができる。
タカコの動きは常に把握できている状態だった。
後は都合のいいタイミングで、接触すればいい。
タカコは今、この都市の城の中にいるようだった。
どうやって入り込んだかは知らないが、何の警戒もされていない今ならたやすく忍び込むこともできるだろう。
「はっはっは。見ていろよタカコ。その力は私にこそふさわしい」
城とはいえ、常に警戒しているわけでもない。
ナノマシンの力を使えば、見つからない偽装などお手のものだ。
目視でしか状況を確認できないセキュリティなど、キョウジにはないのも同じだった。
城の周囲を探し城門を見つけたが、門には誰もいなかった。
タイミングが良かったのか、何か理由があるのかはわからないがキョウジには都合がよかった。
「不用心ですね。さてではいきましょうか―――」
キョウジは隠れることなく正面から行くことを選択した。ナノマシンを使えば生身の人間数人程度ならば意識を奪うことなど容易である。
まぁ例えばモンスターの襲撃でもあって、完全武装の兵士達がずらりと勢ぞろいなんてことでもなければ簡単に対処可能である。
キョウジは木製の門に力を籠めると不用心なことに、鍵もかかっていない。
だが、門を抜けるとそこには完全武装の兵士達が殺気をみなぎらせて、ずらりと勢ぞろいしていた。
「は?」
?
ただ双方ともに、この場にいた誰もが首をかしげたが。