タカコ、捕まる
「うーん……あれ? さっきは反応したのになぁ」
タカコはさっそくペンダントの反応を固く信じて、城を目指した。
ところが城の前にたどり着いたところでもう一度ペンダントを確認すると、どうにも指し示している方向が違ったのである。
「どうしたんだろう? ……まさか故障とか?」
タカコはペンダントを振ってみたりしたのだが、変化はない。
つい脳裏にダイキチの本当に役に立つのか? という言葉が浮かんで来たが、慌ててタカコは首を振った。
「いやいやいや! そこは大前提ですって! 疑うところではありません! とにかく情報を! 情報を集めなければ!」
タカコは声まで出して気合を入れる。
ところが声が大きすぎたのか、いきなり声をかけられて、タカコは赤面した。
「あ……」
「君は……タカコさんか。どうしたんだい? こんなところで」
ただ近寄って来たのは見覚えのある鎧の集団で、その中に見覚えのある顔も発見してタカコはほっと胸をなでおろした。
「ハンソンさん! よかった! ちょうど貴方を探していたんですよ!」
「私を? どうしたんだい?」
ニコニコと笑顔のハンソン。
ドキュンとタカコはときめく。
さすがは騎士様! その紳士的な微笑みは中々刺激的だった。
これは頼らざるを得ないのではないだろうか?
異世界において、頼りになる人との出会いは、ダイヤモンドより貴重である。
タカコは話が早いと、普通の話のテンションで本題に入った。
「ええ実はこの辺に異世界から来た人間っていませんかね? この世界じゃ珍しくないって聞いてるんですけど!」
その瞬間、ハンソンの表情が真剣なものへと変わった。
「……やはり君には、しっかり話を聞く必要があるようだ」
「……はい?」
なんとなく変わった雰囲気に戸惑い、間抜けな声を出したタカコの周囲をガチャガチャと足音を立てて鎧の騎士達が囲み、一斉に槍を突きつけられる。
「えーっと……これは?」
「警戒されていないとでも思ったのか? あんな化け物を連れておいて」
「ば、化け物? ナンノコトダカワカリマセンヨ?」
「わかりやすいな君は……とにかくあの角の生えた化け物について、洗いざらいはいてもらう」
「え? なんですその角のある化け物って……本気でわかんないんですけど?」
さっそく濡れ衣で捕まりたくない。
質問の順番さえ違ったらよかったのに、もう時すでに遅しだ。
ハンソン表情に一切の笑みがない事を確認して、タカコはヒクリとかろうじて浮かべていた、自分の笑顔を凍り付かせた。