王都の守護者
「君がやったのか、これは?」
金髪の大柄な騎士が話しかけるとタカコは焦りながらも頷いた。
騎士の鎧の形状は王都の騎士の者と変わりがない。それは騎士が王都に連なる者だということに他ならなかった。
「え? いや。はい。どうも。モンスターは罠に引っ掛けました。ええっとあなたは?」
「申し遅れた。私は、グランピーク領、騎士団のハンソンという。君は王都からの旅人かな?」
「は、はい! 私達は王都からの旅の途中です!」
王都の事はざっくりとだが話してある。
話を合わせたタカコに、俺はうむとくさむらの中で頷き、何とか会話になっていることに安堵した。
相手に敵意らしきものは感じない。
これなら思ったよりもスムーズに進みそうだと、そう思った矢先、騎士のハンソンはタカコの言葉に反応した。
「私達か……連れの者がいるのか?」
「? あ、はい。一人。今モンスターを解体する道具を取りに行っています」
「ほぅ。こいつらから素材をはぐつもりだったのか。それは中々豪快だな。ならば我らも手伝おう。ここまで来て何もしないで帰るというのは、少々情けないからな」
ハンソンは感心したように笑ってそんな申し出をしてきて、少しだけ俺は身を乗り出した。
「それは助かりますけど……いいんですか?」
「ああ。我々は元々フレイムブルの群れを討伐しに来たのだ。それが終われば、君達の護衛もしよう」
俺はこれはどうとるべきか悩んだが、ひとまず穏便に事が運びそうだと判断してこの場はタカコの任せることにする。
中々男前なことを言う騎士は、グランピーク領の者らしい。
四大貴族という特別な貴族は、広大な土地を守り、統治する役目を担っている。
王族が張っている結界の領域は空間を安定させるが、その外では様々な外敵がどこからかやってくる可能性があった。
結界を展開している王都が結界内の中心部分を統治し、その周辺をドーナッツ状に四分割している土地が四大貴族の支配する国のようなものとなっている。
彼らは張られた結界の境界を守護し、外敵から守っているわけだ。
だから俺は四人のうち誰かの土地を抜けないと結界の外には出られなかった。
俺は思ていたよりもかなり穏便な接触に安堵のため息を吐き、呟いた。
「まぁ山場が来たってことだよな……問題なく通過したいもんだ」
幸い白い戦士は指名手配されているが、大門 大吉ならば旅人でも通用するだろう。
俺はいったんパッとパワードスーツを送り返して、普段の服装になる。
そして気配を殺したままその場を離れ、キャンピングカーに戻ると、解体道具一式をそろえて、テラさんに指示を出した。
「テラさんは、別行動で移動しといてくれ」
『了解しました』
キャンピングカーというよりは、パワードスーツを今回は隠しておいた方がいい。
ここは大型のゲートでも運んで、グランピーク領を抜けてから車を丸ごと転移してやり過ごした方が無難そうである。
だが、そんな物を持って徒歩で歩くのは少しばかり無理がある……。
「じゃあテラさん。トシにゲート用のポータルを持って合流するように伝えてくれないか?」
『了解しました』
そこで俺は生身でもパワードスーツ並みのパワーを発揮できる、我が店の力自慢を召喚することにした。