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使えるものは何でも使うのが狩り

 森に訓練がてら食料採集に出かけると、そこには結構なトラブルが待ち受けていた。


「そういえば、今日朝ゴハンあんまり食べてなかったな。遠慮しなくてもいいんだぞ?」


「いえ。今ダイエット中なので……ってそんな場合ですかね!」


「そうか? ちょうど食材がやって来たから」


 ちょっと食が細いタカコを心配しつつ、迫る足音に備える。


 数十頭の燃える牛は俺の知っている牛の三倍はありそうな巨躯をミチミチに密集させて、俺達をミキサーすべく迫りくる。


「あれって食材ですかね!」


「勝ったらね! 負けたら逆!」


「うそでしょ!」


 嘘も何もそれこそが自然の摂理である。


 こっちがどう思おうとも、向こうはすでに俺達をロックオンしているらしく、進行方向はどこに逃げても、俺達の立ち位置だ。


 森の中に燃える生き物がいるなんて言うだけでも危険なのに、好戦的とは厄介である。


 木々をなぎ倒しながら進む燃える牛たちは重機のようだが、やりようはありそうだった。


「全く、牛のくせに肉食か? まぁそれだけ燃えてるんだから、焼き野菜専門ってことはあるまい」


「私達焼き肉ですか!」


 いやいや、むしろ今晩のおかずが焼き肉である。


 俺はマフラーを木々に巻き付けて、ピンと張り十分に充電した電気を一気に流す。


 群れでの突進は簡単には止まれない。


「そら!」


 俺は戦闘の一体の頭に頃合いを見計らって、エネルギー弾を飛ばし、ひるませて咄嗟の判断力を奪えば、後は入れ食いだった。


「ブモウ!」


 土砂崩れのように一気に倒れこむ燃える牛モンスターを眺めて、俺はふうと息を吐き腰に手を当てた。


「よし! 討伐完了だ! さぁここから一仕事だぞ? 急いで肉にしないと」


「えー……あの、ちょっと私そういうの専門外なんで」


 唖然としつつも、俺の言葉に及び腰のタカコだが、考えてみれば確かにハードルの高い作業だ。


 ここは快く自分が引き受けるところだと判断した俺は、さっそく作業に移ることにした。


「あ? そうか……そうなんだ。じゃあ、ちょっと待っててな」


「でも、これだけあると食べきれんせんよね?」


「食べられない分は、拠点に送って売る。モンスター肉も需要あるんだよな」


 筋肉を作るには良質なたんぱく質からだ。きっとあの燃え上がっても焦げない皮なんかも有意義に使えることだろう。


「……たくましいなー」


 タカコが呟いているのが聞こえたが、俺もそう思う。モンスター食は俺の中でたくましさの象徴だった。


 それはともかく急がないと終わらないなと気合を入れていると、人の気配を感じとって、俺は手を止めた。


 なんでこんなところにと思う一方で、人との接触となると慎重に行きたい。


 こちらに近づいてきている足音は複数人のようだが、最初の遭遇というのは色々と気を遣わなければならない場合が多い。


 例えば今の格好など特にマズイ。


 パワードスーツは最高だが……残念ながら初対面には怪しすぎるのである。


 解除するのもありだが、そうすると出会った人間が敵だった場合、対処が遅れるのが考えものである。


 普段であれば一度引き上げるところだが……今回はちょっとだけ事情が違った。


 俺はタカコの方を向いて、じっと彼女を見た。


 少々服装は珍しいが……人畜無害な女子にしか見えない。


 これならば印象はそう悪くはないのではなかろうか?


 そう判断した俺はタカコの肩をポンと叩き、笑いかけた。


「よし、タカコちゃん。現在人間が接近中の様だ」


「え? そうなんですか?」


 きょとんとしているがすでに危険を感じているらしいタカコは逃げようとするが、逃がさない。


「で、俺は身を隠すから、対応してくれ。なに、そういうのは得意だろう?」


 いわゆる、ヒッチハイク的なおとり作戦である。


 そう言うとタカコの顔色は青くなる。


「えぇぇ。いいじゃないですか! いてくださいよ!」


「いや、ヒーローは基本正体不明の方がかっこいいからなぁ……」


「何ですその理由! だいたいこんな森の中で出くわす人間って大丈夫なんですか? 謎の原人とかでいきなり襲い掛かられて首切られたりしません?」


「すごい想像だなぁそれ。そこはほら、危なそうだったらどうにかできる距離で身を隠すから。……じゃあ頼んだ!」


「え? 本気ですか? ちょっと!」


 接近してくる人間はもうすぐそばまで来ていた。


 俺は急いで身を隠すと、文句を言いかけていたタカコは表情をひきつらせて途方に暮れていた。


 すまんタカコ。時間がなかったんだ。


 ひとまずすぐにでも飛び出せるように、警戒しているとがさがさとくさむらが揺れる。


 そして出て来たのは、見知らぬ鎧を身に着けた騎士だった。


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