比重は警戒多めで
「うーん……快適だ……」
とりあえず使ってくれた勧められた車に連結されたトレーラーの居住スペースはいくつかの世界を股にかけたタカコ基準でも驚くほどに快適だった。
「ベッドにお風呂に、トイレにキッチン。エアコン……この世界の文明レベルはかなり高いのでしょうか?」
まだ判断材料が少なすぎるが、少なくとも一定水準を超えた文明が存在するのは間違いない。
この世界に来て、一番最初に出会った人間。ダイモン ダイキチと名乗った彼は、強くなるために旅をしているという話だが、偽りではないだろうということは、彼の使う鎧を見ても確信できた。
「あれはー……ロボット? いやスーツ……アレは本当よくわからないですね。彼自身も他の世界から来たみたいですが……うーん、さすが姉さんが選んだ世界……一筋縄ではいかない気配がプンプンしますねー」
タカコは唸る。なんにしても相当にここが癖のある世界であることは疑いがない。
でも、幸い、ちょっとおかしなところもあるが、ダイキチさんはいい人である。
こうして気を使ってトレーラーを使わせてくれたあたり、紳士的とすら言ってよかった。
「でも、完全に油断するべきではないですね。優しくしておいて丸々太らせてからバックリいかれるなんて言う話はよくあることだと姉さんも言っていました。慎重に行きましょう」
最初にしては今のところうまくいっているのだ。
こっちに来て早々、協力的な人間に巡り合えたのは幸運なことなのは間違いなかった。
さぁ頑張ろうと気合を入れ、今日はそろそろ寝ようかと思っていると、なんだか異臭がしてタカコは鼻をつまんだ。
「……なんだか臭い? なんでしょう?」
タカコは臭いの元を探して、トレーラーの扉から外をこっそりのぞく。
するとそこには焚火で怪しい鍋を煮ながら、黒い液体を楽しそうに眺めているダイキチさんがいた。
「……」
そっと扉を閉める。
とりあえず、椅子に座りタカコはぎゅと拳を握り締めた。
「うん! 慎重にいこう!」
ベッドに飛び込み、布団を深くかぶる。
とりあえず食事はいつも以上に慎重に食べると心に誓ったタカコだった。