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PS ヒーロー始めました。  作者: くずもち
新たなる旅立ち編
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人命救助は細やかな気遣いが大切

「ぬぅぅ……これは中々めんどくさいぞ。っていうかせめて目を覚ましてくれればもう少し……!」


 本気で動くには意識を失ったタカコの首の座りが悪すぎる。


 動くたびに翻弄される気絶したタカコの頭は、下手に本気で戦闘でもしようものなら、うっかり首が飛んでいきそうだ。


 大部屋に待ち構えていた動く石像は、倒せない相手ではないが数が多く、生身の人間には脅威だ。


 砕いた破片が直撃しても、気絶していたら避ける事さえできないだろう。


 何か救護用の装備を作っておけばよかった!


 俺は苦し紛れにマフラーをおんぶヒモのようにしてタカコの体を背中に括り付けたが、根本的な解決には至りそうにない。


 呪いの装備は体に悪そうである。


 俺はなるべくタカコに負担がかからないよう、石像の間を駆け抜けた。


 石像達は石のくせにやけに機敏だが、所詮は石である。


 離脱には成功したが、俺達の後を追ってきているのは明らかだった。


 俺は舌打ちし、ヘルメットの中で呟いた。


「何なんだあれは? テラさんが腹を立てるあたり、魔法に連なるなにかなんだろうが 魔法使いはいるのか?」


『不明です。しかし最初の部屋に生体反応らしき反応はありませんでした』


「ならこの建物のどこかにいるってことなのか? タカコの情報を信じるならそう言うことなんだが」


『しかし確証がありません。何らかの防御機構のようにも見えます』


 テラさんの言うように、この部屋に入った時点で問答無用で襲い掛かってきたこいつらは、行動が速すぎる上に単純で、話になりそうにもなかった。


 どこかであの石像を操っている術者がいると仮定して探しても、元を叩くという行為自体が無駄になるかもしれないのはいただけない。


「やっぱ逃げるしかないか……なんかもったいないな! よく調べれば、あれもなんかに使えたかもしれんのに!」


『それはどうでしょう? 逃亡には賛成です』


「そうだな! 逃げるか!」


 テラさんと方針を決め、完全に逃げに徹しようとしたその時だった。


 背中に背負った者のバランスが変わる。


「うーん……ハッ! ここは! うぎゃぁ! なんで私おんぶされてるんですか!」


 そしてタカコは寝起き一番に騒ぎ出したが、意識を取り戻したこと自体は歓迎だった。


「気絶してたからだよ、うっかり娘! 起きたんだな! 逃げるぞ!」


 だが目を覚まして動く石像を見た瞬間、タカコは妙なことを口に出した。


「え ? ええ!! あれってゴーレムですか!? やばいですね!」


「……わかるのか?」


 確認のため尋ねると、タカコは勢いよく首を縦に振る。


「はい! アレはゴーレムって言って魔法系の世界でよくあるやつです! 命令に従う、番人みたいなものですよ!」


「……じゃあアレを止めるには!」


「ええっと……どこかにある文字を壊すとか、命令の刻まれた核を壊すとか色々です!」


「命令を忠実に守るか……なら出るのに時間かかりそうだし、潰せる分はここで潰しときたいなぁ。……いや、意識を取り戻したなら。こっちのもんだ! タカコ! しっかり首に力入れて捕まってろよ! 特に頭注意!」


「へ? は、はい!」


 俺は方針を変更して叫んだ。


 タカコがっちりと俺の体につかまり、頭をすぼめたのを確認して、反転。


 俺は迫って来た、ゴーレムに狙いをつけた。


 飛び蹴りを先頭のゴーレムに叩き込むが、壊しはしない絶妙な力加減は大成功。


 俺の蹴りによって吹き飛んだゴーレムは、うまく後続を巻き添えにした。


 そして将棋倒しの大惨事にもひるまずに脇を抜けて来た他のゴーレムの剛腕を、俺は触れるほどのギリギリで避け、カウンターを合わせ叩き壊す。


 そこでようやく背中で悲鳴が聞こえた。


「ひやぁああ!」


 全て数秒の間の事だった。


 俺は床に着地した摩擦で勢いを殺し、追手がもういないことを確認して一息ついた。


「ふぅ……よし助かった」


「死ぬかと思ったんですけど!」


 一言説明が欲しいと涙目で訴えるタカコだが、まぁ非常時だから勘弁してもらいたい。


「そりゃあ、まぁ、普通なら死にそうなところに活路ってあるもんじゃない?」


「全身石礫で痛いです!」


「ああ、すまんすまん。出来る限りかばったつもりだったんだけどな」


 ノーダメージとはやはりいかなかったようだが、対ショック体勢で乗り切れてよかったよかった。


 しばらくタカコの文句は続きそうだったが、俺は彼女を背負ったまま、逃亡を再開する。


「とりあえず外に出るか。上るしかないよな?」


「え? 上るんですか?」


「そうとも、派手に落ちたからね!」


 地下なら壊して進むのも難しいだろう。地道に道を探索するのも骨が折れそうだった。




「……ちっ。運のいい奴だ。現地で護衛を手に入れていたか」


 だがその時、俺達を見ていた視線に俺は気が付いてはいなかった。


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