モンスターに勝利した
完全にレーザー的な弾幕は、ゴリラ型モンスターの群れを襲う。
「ホゥ!」
だがボスのその一声で散開し、回避して見せた時にはさすがに目を疑った。
モンスター達の動きは、かなり統率が取れていた。
怒りを露わにしているようで、同時に襲い掛かってくる群れの動きは兵隊の様で、捨て身に近い攻め方は統率というのも生ぬるいかもしれない。
『あのボスを中心とした群れでしょうが、脳波でコントロールしている可能性があります』
「脳波でコントロール! また高度なことしてるなぁ」
『逆に言えばあのボスゴリラ一体を倒せば一気に瓦解するということです』
「なるほど確かにそうだ」
俺は散ったゴリラ型のモンスター達を無視して、ボスゴリラに狙いを定めた。
しかしそれは同時に群れの中に飛び込んだのと同じことで、様々な方向から集まって来たモンスターから一斉に襲われることになった。
「だがな……平地で囲まれるのには案外慣れているんだぞ!」
俺はマフラーを掴み振り回す。
こちらに向かって襲い掛かって来た雑魚たちを一薙ぎで打ち返し、俺は腰を低く構えて、飛んだ。
俺の体は矢のように真っすぐボスゴリラに向かうが、ボスゴリラはニヤリと笑い両腕を大きく振りかぶって、地面に向かって振り下ろす。
その瞬間、地面はぐにゃりと歪んで波打ち、壁となって俺の行く手を阻んだ。
「うお! 地面が!」
『幻ではありません。回避を』
「わかってる!」
咄嗟に俺は空中に足場を作り出し波を駆けのぼっていた。
殆ど垂直な壁を登り切り、飛び越えた俺は驚愕するボスゴリラに狙いを定めた。
意表を突いた! 速攻で押し切る!
速さもまた、パワードスーツの武器の一つだ。
俺は拳を振りかぶる。
まぁ恨みはない。今回は手加減するとしよう。
行動不能の方が、敵にしてみれば面倒が多い。より追っては来られなくなる。
もう俺はそれくらいのことはできるはずだった。
「麻痺させるぞテラさん! 調整頼む!」
『了解。意識を奪うのなら、直撃は避けてください』
直撃はダメか。
咄嗟に、狙いを足元の地面に切り替えて、拳を振り落とした。
エネルギーが解放され雷鳴が轟くと、ボスゴリラはもとより取り巻きのゴリラ達まで白目をむいて完全に意識を失っていた。
作戦の成功を見届けた俺はすぐさまジャンプして、キャンピングカーの上に着地し出発を指示した。
「よし、全速前進!」
『了解』
エンジンを振り回転させて車が走り出す。
開いた天井から車内に中に入ろうとするとタカコがぽかんとして俺を見ていた。
俺は思ったよりもスマートに終わったことに満足しつつ兜の下でにっこり笑ってタカコに手を差し出し言った。
「大丈夫だったか?」
「ああ……えっと……うん。ありがとうございます」
握手はためらいがちにかわされる。
まぁ、夏生 タカコとの出会いは、こんな風にバタバタしたものだった。