影の部屋
ぽつんと俺は部屋の中にいた。
ベッドがあって机があって箪笥がある。簡素だがどこか落ち着くのはそれが自分の部屋だからだろう。
ただ窓はあるが外は見えない。
部屋にはテレビがあって、ゲーム機が一台繋いであり、影みたいなものが騒いでいた。
一つはトカゲの影である。
トカゲの影は今、ゲームの順番らしくコントローラーを持っていた。
「よし! 俺が最強だ! 待ったかいがあった! 力こそがパワー!」
それも頭の悪そうなことを力いっぱい叫んでいる。
ちょっと共感はするけれども。
もう一つの影のドクロはカタカタとあごを鳴らしてじっと画面を見ていた。
「生き残る事こそ最優先事項だ。そのためにはすべてを食らえ。藁にもすがれ。それで生き残れるのなら儲けものだ」
ドクロのくせに生き残るとは面白いことを言うな。
ちょっと笑ってしまった。
もう一つの影はなんか丸い。
たまにピリピリしているそれはテレビにつながっていてぶつぶつ何か呟いている。
「義務を遂行せよ。獲得し、進化させ、統合せよ。唯一無二の存在たれ。マスターの望みのままに」
なんかちょっと様子がおかしい。
他の影の影響を受けているのかピリピリの他に黒い靄が出ている。
どうにも影響されやすいらしい。まぁまぁそういう時期は誰にでもある。
ただ気になるのはちょっとふにゃふにゃして弱そうな小さな影だった。
その影は他の影の周囲をフラフラしていたが、俺に気が付くと歩み寄ってきてか聞こえるか聞こえないかギリギリなほどか細い声で呟いた。
「……」
でも声は聞こえない。
テレビ画面を見る。
俺は一体なにをしていたんだったか?
そこには間違いなく知っている顔が映っている。
今一記憶もはっきりしないが、俺は黙って影たちを見ていた。