いるとは思っていたけどこんなにいるとは思わなかった
地面から出て来たんだから、穴はあいつが消えたところに繋がっている。
そんな安直な考えだったが、どうやら予想は当たっていたらしい。
テラさんの声は案外地下でもクリアに俺の耳に届いた。
『このトンネルは、先ほど山に見えた不気味な工場につながっていると思われます』
「ああ、やっぱあれ工場だよな」
山の上にあったあの金属の建造物は、城というよりは工場のようだというのは俺も真っ先に感じた。
あの工場で何を作っているのかを想像すると、この先に待ち受けているものが怖くはある。
「問題は敵がどれくらいいるかだよな」
『あの工場の生産能力と、そもそものオークの群れの規模にもよるでしょう』
「警戒しておくにこしたことはないけど……」
しかしトンネルは一本道だ。警戒しようにも取れる行動は限られる。
俺はこのまま走り抜けようと心に決めていた。
罠があるかもしれないが、即決で後を追ってきたのは、奇襲をするためだ。
相手は地下からの奇襲を成功させて、少しは油断しているはずである。
迷っている時間が惜しい。
あのでかいのは今まさに敵を混乱させたと思い込んでいる。実際騎士団には効果テキメンだったがこのわずかな間こそ俺達第三勢力の機動力の見せ所だった。
「あのでかさだ。探すのはそんなに難しくないさ。さぁかましてやるぜ? 電光石火の救出作戦をな!」
『うまくいけばいいのですが』
俺のやろうとしていることを察したテラさんは、コンピュータのくせに、スピーカーごしにため息のようなノイズを発生させるなんて器用なことをしていた。
穴はこのスーツをもってすれば、あっという間に駆け抜けられる。
顔を上げれば、出口の光が近づいていた。
そして俺は一切ためらわず光の中に飛び込んだ。
ズッダン!
開けた場所に飛び出すと、俺は出た先でサウナよりも濃密なスチームを見た。
ブシュー!!!!
「……うはぁー……奇襲、失敗だな?」
『追撃の準備があったようですね』
蒸気を出しているのは、開けた部屋を覆いつくす武装オークの群れだった。




