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勇者は負けないが弱点はある

 春風ツクシは、次々現れる黒い球を間合いに入った瞬間にすべて真っ二つに切り裂いて行く。


「何だ思ったより柔いな!」


 当然のように空を駆けて、光の聖剣を振るうツクシに数百機並んだ球体からチカチカと熱線が放射された。


 本来なら熱線は岩をも溶かすが、しかしツクシに限ってはそうはならない。


 不可視の熱線を当然のように回避し、数秒後には球体の方がガラクタとなっている。


 空中での戦闘という名の駆逐作業を終え、ツクシは王城の最上階へ着地した。


「ふぅ。数があるとやっぱり疲れるな!」


「勇者様! すみません! 遅れました!」


 一息ついてくると屋上に駆けつけて来たらしい副官のヒルデの声が響く。


 ツクシはよく通る声でヒルデにすぐさま指示を出した。


「もう城の人間は逃げたか! 避難優先だ!」


「すでに9割は避難完了しています! 後は戦闘可能な魔法使いのみです!」


「……わかった!」


 返事を聞いたツクシは一瞬眉を寄せたが、すぐに敵へと注意を移した。


 今度は、黒い球体とは違う、新たな敵がちょうどツクシの目の前に降ってくる。


 ズドンと巨大な質量が王城のてっぺんに激突し、動き出したのは蜘蛛型の多脚ロボットだった。


 スムーズな動きで全身から青い光を発する蜘蛛ロボは低い駆動音を響かせてツクシに襲い掛かる。


 ロボットの前足攻撃を細切れにして、ツクシは一息で間合いを詰めた。


「せい!」


 ツクシの気合の一閃で、ロボットは左右にずれて塔から落下し爆発した。


 春風ツクシはおそらく勝てる。


 理想の勇者を止められるものなんていない。


 その姿を体現したのが、勇者ツクシの姿である。


「……」


 周囲では他にも落ちて来た蜘蛛型のロボットが暴れていて、魔法使い達がずいぶん苦戦していた。


 彼らはとても頼りになる。


 そう思ってはいたが同時にツクシは感覚的に理解していた。


 彼らは勇者よりも弱い。


 ツクシが無造作に聖剣を振ると生じた飛ぶ斬撃が、蜘蛛型ロボットを破壊する。


 ツクシを止められるものがいないということは、並び立つ者もまたいない。


 だから、どうしようもない危機が訪れた時、勇者ツクシは彼らを守る。


 ツクシは空を仰ぎ見て、チリリと首筋の産毛が逆立ち、危険を察知した。


 浮かぶ敵の船の装甲が開き、巨大なレンズが現れる。


 赤く輝きだした光からは死の匂いがした。


「……アレはやばいな!」


 咄嗟に避けようかと思ったが、彼女の真下には塔で戦う仲間がいた。


 どんなに自分が速く動いても、あの巨大な船を沈めることはできない。


 そう直感したツクシは飛び上がり聖剣を構える。


「―――」


 瞬間。レンズから放たれた主砲は、大気を震わせ一個人に向けてまっすぐ放たれ、王城を木っ端みじんに粉砕した。


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