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熱い説得

「おおダイキチじゃないか。こっちに帰ってきてたんだ」


「久しぶりだなダイキチ。いやー焦った焦った」


 やれやれとリッキーとシルナークはお疲れだったが、ちょいと事情を聴かなければならないだろう。


「王都は今大変なんじゃないか?」


 というか、間違いなく大パニックだろう。


 そこのところは隠そうともせず二人はナハハと照れ臭そうに笑っていた。


「あ、知ってるの? いやービビッて帰ってきちゃった」


「ああ。あれじゃあ商売どころじゃないだろ」


「……ちなみにどんな状況か聞いても?」


「なんだか王城の空にでっかくて四角い機械っぽいのが現れた」


「どう見てもやばそうだったから、ひどい目に合う前に避難してきた」


 そうか王城の真上か。


 それは王都のど真ん中に謎の侵略者が現れたということではあるまいか?


「ちなみにトシは?」


 そう尋ねるとリッキーとシルナークは渋い顔をした。


「留守番だから、とりあえずできる限り店を守ってみるって」


「危なそうなら逃げるようには言ってある」


「うーむ、トシにそこまで言わせるか」


 かなり深刻そうな事態に俺は知らず知らずに頭を抱えていた。


「なるほど。その判断は素晴らしい。しかし王城の上なぁ。また召喚魔法でもやらかしたか? あの王様?」


 だが気になるのは、王都の中で揺らぎが起こるとしたら王族が何かしたとしか思えないというところだった。


 王族はその手の魔法を研究しているのは俺も調べている。


 ただ呼ばれっぱなしというのも何なので、昔王都にいる間調べたのだが、今回も召喚魔法に手を出したのだとしたら愚かだ。


 というのもあの魔法、とても完璧とは言えない。


 少なくとも俺が調べた限りでは失敗も多いらしく、俺という失敗例がなによりの証拠だろう。


 なんにせよ大雑把に過ぎる。


 ツクシという成功例だけに焦点を当てていたら、いつか手痛いしっぺ返しを食らうこと請け合いだ。


 俺はため息を吐くが、今後どうするか、悩ましいところである。


「今回は放っておくかな?」


 それもまたよし、なんて思ってしまうのは、俺が呼ばれてきたからだろうか?


「じゃあさっそく準備をしようか! ……って、え? 今なんて言った?」


「どうした? 今回はそんな感じなのか?」


 だが俺の反応に困惑したが、むしろ周りの方だったのは予想外だった。


 リッキーとシルナークはやる気だったらしく、困惑していた。


「おいおい、らしくないじゃないか……ダイキチ。ヒーローがそれでいいのか?」


「なに?」


「そうだぞダイキチよ。ここは本領発揮するべきところではないのか? パワードスーツが泣いているぞ?」


 更にリッキーとシルナークは何やら熱いセリフで俺を鼓舞し始めた。


 なんだか妙だと思いながら、俺は唸る。


「……いやなぁ。王都に直接来てるなら自爆の可能性が高いんだろ。俺だって思うところはあるわけでな……そもそも簡単にやられるやつらじゃないしなぁ」


 そりゃあ、テラさんの情報が本当なら簡単な相手ではないだろうが王都の戦力は大事になればなるほど強くなる。


 そのあたり思い浮かべて肩をすくめるが、二人の説得は止まらなかった。


「おいおい言い訳を並べ立てるなんてらしくないな。ここはガツンといっちゃうべきなんじゃない?」


「いやしかし、今回の旅でずいぶん無茶をしたからパワードスーツもガタが……」


「何を言っているのだダイキチ! いないのなら仕方がないと思っていたが……手の届く距離に困っている人がいるのなら助けるのが真のヒーローってものだろう!」


「そうだよ! 君らしくない! 君の情熱はこんなもんだったのかい!」


「???」


 やはり熱いセリフである。


 とてもらしくないリッキーとシルナークに俺は心底困惑した。


 こいつらって、こんなに熱いことを言うやつらだっけ?


 俺としてはここまで言われては乗らないではないのだが、そこのところはとても引っかかる。


「……そうだな。ヒーローだもんな! 行かなきゃ嘘だよな!」


 だからこそ、俺端勢いよく立ち上がり乗ってみた。


 するとどうだろう。


「そう来なくっちゃな!」


「うむ! ではちょっと待て!」


 リッキーとシルナークも勢いよく立ち上がって力強く頷くと、どこかに走って行ってしまった。


「……なんだあれ?」


 二人の消えた先をしばらく見ていると、二人は疑問の答えをすぐに持ってきた。


 まず現れたのはシルナークである。


 シルナークは新しいインナーをご丁寧にマネキンに着せて、目を輝かせてプレゼンした。


「ではこいつをお前に進呈しよう! 何礼は必要ないぞ? 従来のインナーより柔軟性と耐久性が増しているのに加えて、魔王の細胞を利用して魔法をある程度魔力に返還する働きを付与した試作品だ!」


 そしてヨロヨロとでかい木箱を台車に乗せてやって来たリッキーは俺の前にくると、木箱の中から新しいヘルメットを取り出してにやりと笑みを浮かべた。


「パワードスーツのダメージが大きいんだろう? こんなこともあろうかと、新しい外装は用意してあったのさ! 実は君が行方不明になっていた山で謎の鉱物が発見されてね! 外装の素材に混ぜてある。金みたいなんだけど、従来の素材と混ぜると防御力性能が飛躍的に向上したんだよ! テラさん調べだ! 間違いない!」


 うん、地下秘密基地のフル活用してくれているようで何よりだ。


 どうやらこいつらは、俺のいない間に存分に腕を振るっていたようだった。


 ちょっと、共同資金の減りがどうなっているのかは気になったが、俺がそれを気にするのもおかしな話だ。


『出撃するのなら、急ぎましょう。すでに精霊化という現象に合わせてパワードスーツの調整は済ませてあります。準備は万端です』


 更にはテラさんまでそんなことを言う始末。


 先日の一件からどうもテラさんの発言が、自由になった気がしないでもない。


 俺は熱い視線にさらされて、ハァと一つため息を吐いた。


「お前ら……ひょっとして、新しい装備を試したくって仕方なかったりしないか?」


 俺が尋ねると少なくともリッキーとシルナークは目をさっと逸らした。


 全く仕方がない奴らであるそして―――。


「ハッハッハ! ……最高だなお前ら。じゃあさっそく準備するとしよう!」


 準備万端整っているというのなら、くすぶっている必要はない。


 敵もいるなら望むところである。


 俺はバチンと頬を叩いて、戦闘モードに意識を切り替えた。


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