その頃俺は
俺、大門 大吉は、長い旅を終え、鉱山街の方にたどり着いていた。
行きはニーニャの感覚だよりだったが、よくよくマッピングしてみてみると直線距離で鉱山街の方が比較的早かったからである。
それでも過酷な旅だったのは間違いない。
俺は見慣れた風景を見て泣きそうになったくらいである。
懐かしきゴミ山に戻り、秘密基地で風呂に入って一息つく。
同じく風呂上がりのニーニャと共に作戦室のテーブルに突っ伏してふにゃりとだらけた。
「オオオ……ようやくたどり着いたなぁ。もう俺はかっこいいからって貴重な旅の脚を攻撃手段に使ったりしない」
『全くです。あきれ果てます』
【てんちょ……】
「おいおい。頑張った俺にその物言いはひどいんじゃないか? その分めちゃめちゃ走ったろ?」
考えてみれば、さすがに用意してもらったバイクを早々にぶっ壊してしまったのは悪いことをした。
残骸の中から、替えの効かない部品は回収してきたので、後でテラさんともう一度組み直す必要がありそうだった。
ちょっと料理をするのが億劫だったから、旅の残りの干し肉をガジガジかじっていると、なんだかけたたましい警報が基地内になり響いた。
『緊急事態です。我が軍の船が王都に現れました』
「は? 我が軍て、なんの?」
『私の元居た世界のです』
「ふーん……はぁ?」
今一俺が話の全容を掴みきれないでいると、ディスプレイに、見たこともない宇宙船らしき図面がいくつも映し出されてテラさんは続けた。
『図面の船が一隻、この世界に転移してきたようなのです。非常にまれなケースであると考えられます』
「そうだろうとも。で、どうするんだ?」
『即時撤退。もしくは撃滅を提案します』
「……ワォ。なんか過激ですね」
我が軍というから、てっきり白旗を上げ、荷物をまとめて合流するとか提案されるかと思いきや、そう言うことではないようだった。
『私のマスターは貴方です。私は貴方の生存を優先します。おそらくこの船は人類生存可能な地表を確認しだい、侵略任務を開始します。そうなれば無差別の攻撃に巻き込まれることは必至です』
「そこまで無茶苦茶なのか? テラさんとこの人類はどれだけ追い詰められてたんだよ」
『それはかなりのものでしょう。当時から人口が爆発的に増え、惑星のテラフォーミングには力を入れていましたが、あの船は私のいた時代よりも若干未来のものですから、さらに外に人類の生存圏を広げるのが目的の様です』
「まじかー」
なんか本当に緊急事態っぽい。
俺があまりに振ってわいたSF風味な話に、どうしたものかと頭を悩ませていると、作戦室に大荷物を持ったリッキーとシルナークの二人組が入ってくるところだった。