宣戦布告
ツクシは空を見上げてSF映画にでも出てきそうだとそう思った。
「な、なんだあれは? 人間が出てくるはずではないのか!」
「どうなっている! 手順を間違えたのか!」
口々に怒号が飛び交い、腰を抜かしている王様とどよめく布人間達の様子から今の事態が予想外のものだとわかる。
しかしもうどうしようもなく、来てしまったものは仕方がない。
ツクシがそうであるように、送り返す方法なんてないのだから、取り乱すのは見苦しかった。
「んーどうしようかな」
向こうも呼び出されたというのなら状況をちゃんと把握できていない可能性がある。
少なくとも自分はそうだった。
ツクシは同じ境遇ということもあって、いきなり攻撃するのはためらった。
「何かが飛んでくるぞ!」
だが、そう誰かが叫んだのをツクシは聞いた。
確かに空には無数の点のようなものがばらまかれ、こちらにも一機、黒くて丸い球体が飛んでくる。
機械らしきそれはピタリと空中に静止すると、すぐに音声が流れ出した。
『現住民に告ぐ。我々は君たちに宣戦布告する。これは生存圏を賭けた戦争である。投降の意思があるのならば受け入れるが、これは現在の生活を保障するものではない』
「……」
ツクシは黒い球体が中心にある赤いレンズを光らせて、抑揚のない録音みたいな声で話すのを聞いて、聖剣を一閃した。
「あ、ダメだ。これ話にならない奴だ」
スパンと目の前の球体だけを両断しても、声は町中から聞こえてきている。
『繰り返す。これは生存圏を賭けた戦争である』
あまりにも一方的な物言いは、さすがに物騒だった。
そしてここまで凶悪に敵対されると勇者的には対応は限られていた。
「えーと。よし、じゃあいくぞ!」
ツクシは気合の言葉を口にして、眩い光がツクシの体を包み込んだ。
その魔法の輝きは、彼女の理想の姿を形作る。
光の中から現れた凛々しい女性は、しかし空を見上げてため息を吐く。
「でも……これどうするかな?」
ツクシの視線の先には、空に浮かぶ赤いレンズが船を覆い隠すほどチカチカと光っていた。
「まぁとりあえず片っ端から切っていくしかないな!」
ツクシは聖剣を構え、浮かぶ機械に突撃した。