表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
245/462

王様の呼び出し

 ツクシが王城を訪ねると、妙に騒がしく、首をかしげる。


 あちこちで鎧を着た騎士団が慌ただしく走り回っていて、なにかをやっているようだった。


「なんだろな?」


 誰かに声をかけて聞いてみようかと考えていたツクシだったが、その前にツクシは変な奴に話しかけられた。


「勇者ツクシ様でございますね? ようこそお越しくださいました」


「……布人間」


 ツクシを待っていた人間であるはずだった。


 しかし全身真っ白な布で頭から足元まですっぽり隠している人間を見たら、大抵の人間は警戒するだろう。


 良く言っても、舞台の黒子の白いバージョン。


 怪しいことに変わりはなかった。


「いえいえ、普通の人間ですよ。これは儀式用の聖衣です」


「儀式? 何かやるのか?」


 そんな話は聞いていなかったツクシが尋ねると布人間は頷いた。


「ええ、お聞きになっていませんでしたか?」


「聞いてないぞ?」


「そうですか……ですが勇者様はよく知る儀式だと思います。ひとまずご案内いたしましょう」


「……そうか?」


 そしてそのまま歩いていく布人間に仕方がないのでツクシは続いた。


 この時点で、なんだか嫌な予感がツクシにはあった。


 目の前の布人間は機嫌が良いのか饒舌で、よく喋るのもその一因である。


「いやいや、勇者様のお噂は耳にしておりますよ。今朝もご活躍だったのでしょう? 王城では勇者様の話を聞かない日はございません」


「それほどでもないぞ? 大きな蛇をやっつけただけだ」


「おお! 大蛇ですか! 我々には恐ろしいモンスターでございますよ。さすがは勇者様です」


「うーむ」


 とにかく勇者をほめちぎる布人間は王城をどんどん進む。


 いい加減歩くのが面倒臭くなってきたくらいに階段を登りきると、ツクシは屋上に案内された。


 そこは広い円形の屋上で、真ん中が一段高くなった祭壇になっていた。


「ハァハァハァ……お、お疲れ様でした、勇者様」


「別に疲れてないぞ」


「さ、さすがは勇者様でございます」


 ものすごく息を切らした布人間はやはりツクシを褒めたたえる。


 王城の頂上は、広い祭壇になっていて、他の布人間が沢山並んで祭壇を取り囲んでいた。


「ぬ」


「ご理解いただけましたか?」


 傍らの布人間はしたり顔で、ツクシはちょっとイラっとした。


 その場所をツクシはよく知っていて、思わずウゲッと顔をしかめた。


「まさか儀式って、あれをやるのか!?」


 驚いたツクシはまだ肩で息をしている布人間に視線を向けると、布人間は大きく頷く。


「……そうでございます。召喚魔法でございますよ。勇者ツクシ様にはぜひこちらで見届けていただきたいのです」


「見届けるって何を?」


「何か危険な人間が呼び出される可能性もあるので」


「うーむ……単に、護衛をしろってことか?」


「……そうとも言いますね!」


 ではこれでと、布人間は他の布人間に交じって行ってしまう。


 一度見失うと、もう誰が誰だかわからなくなりそうだ。


 ツクシは自分が来た時もあんなのいたかな?と首を傾げた。


 しかしなんというか、またろくでもない事を始めるつもりらしい。


 ツクシは召喚自体にあまり良い印象はないが、そうする必要があったことは理解していた。


 やれやれとツクシは適当なところに膝を抱えて座る。


 そして祭壇の上にいる、やたら派手なマントと、金色の冠を被ったおじさんを眺めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ