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取引

「パワーアップから、元に戻るまでが早くないか……?」


『対抗手段があるのであれば当然の結果です。しかし、こちらがスペックとして劣っていることはないと判断します。先に戦った個体と闇の大精霊は基本の技術に大した差はないと思われますので』


「じゃあ、今まで通り……あいつに直接、拳を叩きこめれば壊せるか?」


『可能です。しかしあの黒い物にはご注意ください。こちらも高出力のエネルギーをぶつけなければダメージがあります』


「エレクトロコアだけでいけるかどうかってとこだな」


 拳に込めた電撃でどれだけダメージを通せるか、大精霊とまではいかなくても本体さえ破壊できればワンちゃんあるってところだろう。


 ならまぁ今まで通りやるだけだ、こっちだって最初からパワーアップを期待していたわけじゃない。


「まぁいつも通りに」



 待て



「なんだ?」



 迂闊にあれを破壊してはいけない アレは我々とは違うのだ



「どういうことだ?」



 あの狂った人間が作った器はいわば枷 本来大精霊が力を振るうとは人にとっての天災だ



 我らの力は火山を噴火させ、大風を呼び、地面が震えるそう言ったたぐいの物 あの器はその力を御することに重きを置いている



 我々のように意思の力でそれを抑えられるのならばよい……しかし



 あの闇の大精霊は、あまりにも不安定な力の塊だ



 器からあふれ出れば止められまい



「つまり……あの体を壊したら?」



 暴走する



 荒れ狂う



 滅び去る



 無に帰る



「すごく危険だってことはわかった……」


 口をそろえて、危険を訴えてくる大精霊様に俺はうんざりと顔をしかめた。


 つまり倒すことはできずに、無力化しないといけないと。


 それは事実上手がないということではないだろうか?


「そう言うことはさっき言ってくれませんかね?」


 出て来た時に伝えればもう少し状況はマシだったのにと俺は文句を言うと、大精霊達は口々に言う。



 あのままならば我らが抑えきれた



 しかし我らの力が抑えられた今となってはもはや



 奇襲が前提だった



 ………



「で、失敗しちゃったわけだ」


 ちょっと俺のせいみたいになりそうなのが引っかかるところである。


 会話を聞いていたのか、闇の大精霊は俺に向かって手を伸ばす。


 それは圧倒的に自分が有利なのだと確信している余裕の表れに見えた。


「敵ではない……そう我々の敵ではないのだ。わかっていて、なおその異世界人に与するか?」


 闇の大精霊の質問は、他の大精霊達へと向けられたもので、彼らは沈黙をもってそれに答える。


 返答を得られないとわかった大精霊は力なく、その腕を下げた。


「そうか……」


 黒いオーラは、新たに体を形成しパイプすらも取り込んでいた。


 先ほどまで触れることくらいはできたそれらは完全に黒く染まり、大精霊達の加護がなくなった今、まともに触れるのも危険そうである。


「では消え去れ」


 乱れ打たれるパイプの乱撃を、どうにかかわす。


 わずかにかすったパワードスーツの外装が削り取られるのが見えた。


 俺は内心悲鳴を上げ、分が悪くなってきたことを痛感した。


 なんというか、もうどうしようもないのならニーニャを抱えて逃げるのもありな気がしてきた。


 退路を確保しようとニーニャの位置を確認すると、視界に両手を振りやたら主張が激しいドクターダイスが割り込んできて、俺に向かって何か叫んでいた。


「お困りのようじゃね! どうじゃね? わしがどうにかしようか!?」


「……」


 ぴょんぴょん飛び跳ねながらドクターダイスは前にでる。


 注目を浴びるってこと自体が正気ではないが、同時に言葉の信憑性も上げてくるからたちが悪い。


 ドクターダイスはそんなリスクを物ともせずに、それはも楽しそうに笑い言った。


「そうじゃ。わしならこの状況を何とかできるぞい! ただし! わしが手を貸した時点でお前は人間をやめることにもなるかもしれんぞ? 何せわしはマットサイエンティストじゃからな! ……それでもお前は力を求めるか?」


 最後だけ妙に雰囲気のある調子で俺に告げるドクターダイス。


 何を馬鹿なことを。


 俺はイラっときてドクターダイスに小石を投げつけた。


「馬鹿なことやってないでさっさとできるならしろ! 死んじまうぞ!」


 スコンとおでこに見事に大当たりしてドクターダイスはひっくり返ったが、すぐに不気味に笑って起き上がった。


「うひょひょひょひょひょ! 全く考えもせんか! やっぱりいい! いいな!」


「やかましい!」


 やたら楽しそうに自分の懐をあさり始めたドクターダイスはシャーペンのようなものを取り出すと尻のボタンを力強く押していた。


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