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フォームチェンジは一瞬で

 精霊というのは、いわゆる自然現象を司る超自然的な存在であるらしい。


 大が付くともっとすごい。


 俺の周囲をふわふわと漂う四つの光は、それぞれすさまじい力を秘めている存在であることは間違いなかった。


 彼らは俺に語り掛ける。



 臆するな人間よ


 我らを解放したこと感謝する


 あやつは我らが同胞だ。止めねばならぬ



 ……協力を頼む



 威厳のある声である。


 助けてくれるというのなら願ってもない。


 何せこの四体が出てきてから、どうにも闇の大精霊のやつの様子がおかしいのだ。


 黒いオーラは最初から出していたがその密度が明らかに違う。


 そしてロボットにしか見えないはずの闇の大精霊から感じる激怒しているとわかる圧力はきっと気のせいではない。


 だが彼らから感じる力は闇の精霊を前にしてまったく負けていなかった。


「……ああ、よろしく頼む!」


 俺は頭の中に響く声にそう答えた。


『いったいなにが起こっているのですか?』


 今一状況を把握していないテラさんには、この声は聞こえていないようだった。


「大精霊と話してる……アレを倒すのに協力してくれるらしい」


『大精霊とは……先ほどの戦闘兵器の事でしょうか?』


 先ほどのというと、ここに来る前に戦った色とりどりの鎧の事か。


 俺は縦に頷いた。


「正確にはアレの中身らしい。実際すごいぞ? 力をビンビン感じる」


『感覚的な話をされると困りますが……本当に大丈夫ですか?』


「……ん?」


 実際このパワーを肌で感じれば頼もしいことこの上ない。


 俺にしても思わず万能感に酔いしれたくなるほどだった。


 テラさんはまだ言いたいことがある様子だが、闇の大精霊は動き出す。


「お前達が……我々の敵になると言うのか!」


 空気を切り裂く叫びを合図に猛烈な攻勢が始まった。


 闇が蜘蛛のような先の鋭い多脚の脚を生成し、直接俺を串刺しにしてくる。


 更にはパイプも黒く覆われ、鞭のごとく乱れ打ちしてきた。


 冷静さはなくなったが、戦い方が今までよりも荒々しく、凶悪になった。


「しかーし! 俺もさっきまでの俺とは違う! 炎の大精霊さん! 願いします!」



 わかった!



 力強い同意の意思を感じた瞬間、パワードスーツの色が一気に赤く染まった。


「な、なん……だと! テラさん色が!」


『変わりましたね』


 まさかの変身である。これで負ける気がするわけがない。


 俺の右手が真っ赤に燃え上がり、今必殺の一撃を解き放つ。


「こいつを……喰らえ!」


 鋭い脚の攻撃をぎりぎりでかわして、俺は思い切り振り被った炎の拳を足の横っ腹に叩き込んだ。


 猛烈な爆発に身体が包まれたが、まるで熱さを感じない。


 炎は俺の身体であり。俺の身体は炎である。


 その一体感は今までの耐え忍んだものとはまさに別物だ。


 黒い闇を吹き晴らす閃光の一撃は、俺の右手に宿っていたのだ。


 足の一本を散り散りにした拳は力を入れすぎて震えていた。


「おおおお! 赤くなった! それに魔法使う感覚ってこういうのなのかもな!」


 感動して知らず知らず泣いてした俺である。


 しかしテラさんからは、すぐにたしなめられた。


『油断はするべきではありません。確かにかなりの力ですが……』


「どうしたテラさん? なんか歯切れが悪いな? なんちゃって魔法だぞ? そのうえ四色変身機能付きなんだぞ? もっと喜べ!」


『喜ぶべきところはそこなのでしょうか?』


 次々ガガガンとめちゃくちゃに振るわれる足を次々かわす。


 本気で大精霊たちが力を貸し始めたことで、パワードスーツ自体の力が底上げされているのを感じた。


 これなら、負けるはずがない!


「さぁあれをさっさとぶっ壊すぞ!」



 ……次は私が



 パワードスーツが茶色く染まって、どっしりとした重量感を感じる。


 さっきのがフレイムフォームとかなら、今度はガイアフォームとかいいかもしれない。


 俺は勝利を確信し、攻めに転じようと頃合いを見計らっていた。


 だが俺が回避に専念したことで闇の大精霊にわずかながら冷静さが戻って来た。


「……」


 いったん引いた闇の大精霊は、闇の勢いを少しだけ弱め、俺に向かって手をかざす。


 壊れたはずの部屋がブオンと振動したのを感じると、見る見るうちにパワードスーツの色が抜けてゆく。


「な、なんだ!? ちょっと! 大地の大精霊さん!? 見せ場ですよ! 大事なところですって!」


 慌てて声をかけたが、もはや声すら帰ってこない。


 俺には何が起こったのかわからなかったが、テラさんはある程度予想していたようだった。


『やはり……マスター彼らはすでに解析され対策を打たれています。ニーニャが敗北したのがその証拠です』


「……ば、馬鹿な」


 せっかくめちゃくちゃ強くなったと思ったのに。


 あまりにも……あまりにも天下が短すぎるのではないだろうか?


 シュンナリと周囲に浮いていた光が勢いをなくしたのを見て、俺は今までとは別の意味で、振出しに戻ったことに涙した。


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