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精霊の箱庭

 飛んできた黒い波動をニーニャは魔法で受けようとしたが、マー坊がとっさに尻尾の何本かを使って、ニーニャの身体を強引に引っ張った。


「!」


 黒い波動の軌道からなんとか回避したが、波動に触れた床はゾンと聞いたこともないような音を立てて、削り取られた。


「アレは受けるな! そういう性質の攻撃だ!」


【わかった】


 波型に削り取られた痕からは、煤のようなものが立ち上っていた。


 金属製の床がじわじわといまだに黒く浸食がすすみ、ぐずぐずに崩壊してゆく様子をみて、ニーニャは冷や汗をかいた。


 これからこの攻撃が立て続けに来るかと思いきや、闇の大精霊はピタリと動かなくなってニーニャに向かって黒い波動を放った刺々しい冷たい手を向けた。


「止まれ。解析が終了した」


【解析?】


「どういうことだ?」


 突然何を言い出しているのかわからなかったがこちらにかまわず闇の大精霊は続けた。


「警告する。これ以上の戦闘は無意味だ。即座に戦闘行為をやめ、両手を首の後ろに置きなさい」


「かまうな!」


【わかってる!】


 ニーニャのしっぽが唸りを上げて飛んで行くが闇の精霊の直前でパンと音を立てて砕け散った。


「な!」


【どうしたの!】


「君の攻撃はすべて無力化が可能だ。我々は、現在存在が確認されているすべての精霊に対して有効な手段を所持している。そして現在の戦闘で、君の体に紛れ込んだ異物の解析が終了した」


【そんなことできるわけが!】


「可能だ。ここは精霊を研究する施設だ。その力を源泉とする君には元より勝ち目などない。我々は精霊の複合存在。存在しない五つ目の属性として生まれ、統括する者」


 闇の大精霊が宣言すると、部屋中がブゥンと振動し、ニーニャの身体から一気に力が抜けその場にへたり込んでいた。


【……これは】


「ニーニャ! おいしっかりしろ!」


 マー坊も叫ぶが、ニーニャが指一本動かせないことを察すると今度は闇の大精霊に問いただした。


「何が目的だ。この野郎」


「目的は通達済みである。我々は精霊種の保護が目的である」


「そもそもその保護ってのがよくわからねぇ? 誰かから頼まれでもしたのか?」


「違う。これは我々の判断である。我々を作り出した者は我々を捕らえ、操る。故に保護しなければならない。幸いこの場所は精霊種を保護することに長けた場所だ。我々はこの施設を利用し、更なる発展を遂げるだろう」


 チカチカと闇の大精霊は、黒い鎧の目を明滅させて動けないニーニャに問う。


「今一度問う。我々に同意するか?」


 ニーニャは力を振り顔を上げ、にやりと不敵に笑って言った。


【いやだ。もう私はかごの中に戻るつもりはない】


「そうか―――今はまだ理解は不可能だと判断する」


【……!】


 闇の大精霊が無数のパイプを動かし、ニーニャに伸ばす。


 もはや抵抗する手段がない。


 ギュッと目を閉じたニーニャは身をすくめたが、しかしドドドドという不気味な音と地鳴りが響いて、その場にいた全員の視線が上に集中した。


「一体何が?」


「……なんか嫌な予感がする」


【私は、いい予感がする】


 バキっと致命的な音とともにあふれ出したのは水だ。


 瓦礫と濁流が天井から降り注ぎ、それよりも早く飛び込んできた白い鎧にニーニャは瞳を輝かせる。


「ぬおおおお!」


 闇の大精霊は突如聞こえた雄叫びに反応してパイプを伸ばすが、彼が盾にした青い鎧に突き刺さった。


 その隙に白い鎧はマフラーを伸ばして濁流にのまれたニーニャを絡め取ると引き寄せ、ニーニャを抱えたまま、大きな瓦礫の着地する。


「はぁー……死ぬかと思った。それでお前が闇の大精霊であってるか?」


 そしてダイモン ダイキチは着地早々、闇の大精霊と対峙した。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] >ダイモン ダイキ いいところで脱字ィ! [一言] ニーニャがいろんな意味で大吉を信頼してるのいいですね。
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