ニーニャvs闇の大精霊
一方さらに下層では、闇の大精霊とニーニャがじっとお互いを見つめあいながら、濃密な殺気をぶつけあっていた。
さっきからこの建物自体が揺れていたが、気にすることもなくニーニャは瞬き一つせずに闇の大精霊を注視し続けている。
「ヒャッハッハ! やるのか! やるのか!?」
【……無力化する】
ニーニャは身体から出した黒い泥を操り、かぎづめと鞭のようなしっぽを無数に生成する。
「未知の攻撃だ。データを収集する」
たいして闇の大精霊は、繭のような形状だった巻き付いたパイプがほどけ、うねうねと動き始めた。
刹那、すさまじい速さで襲い掛かるしっぽを、パイプが網のように折り重なって阻み、火花が散った。
ちなみにニーニャの放ったしっぽの先は鋭利でドリル状だった。
【……】
「殺意たけぇなおい」
それはともかく、この闇の大精霊は中々強いらしい。
並みの相手なら今ので完全に串刺しにしているはずだ。
だがそれは想定内だったようで、ニーニャはすぐに動いていた。
【―――】
ニーニャの手のひらから炎が放たれ、闇の大精霊の炎が爆発する。
更に爆発が広がる前に強力な竜巻が包み込み、火柱となって炎の勢いが尋常ではないことになった。
【―――!】
更に更に空中に氷と岩の槍が瞬時に生成され、ずらりと炎を取り囲むと一斉に闇の大精霊がいるあたりを串刺しにする。
マー坊は直前まであれだけ高かったテンションがシュンと落ち着いて、唖然として呟いた。
「だからニーニャ……殺意強すぎじゃないか?」
【……そんなことはない】
とか言いながら飛んで行った槍の形が牙みたいに変化してまだガチガチやっているあたり念入りである。
「残骸が残ってるかも怪しくないか?」
マー坊はようやくおとなしくなってきた炎にフヨフヨと黒くて丸い自分の塊を飛ばして見せるが、次の瞬間、黒い塊は真っ二つに切り裂かれていた。
「ぬお!」
「素晴らしい。炎、風、水、土の魔法の同時制御とは。大精霊の解析が済んでいなければこの器が崩壊していた可能性もあった」
【!】
「おいおいまさか無傷かよ」
マー坊は再生しながら目を見張る。
魔法攻撃の中から右手が勢いよく突き出し、岩の牙がさらさらと崩れ去る中、漆黒の鎧が姿を現す。
あの激しい魔法の中にいたはずの闇の大精霊は、一筋の傷さえもなく、煤すらついてはいなかった。
闇の大精霊は体となっているらしい漆黒の鎧の背にパイプの何本かを接続し直し、ゆっくりと体を宙へと持ち上げる。
「その魔法では我々にダメージを与えることはできない。魔法を分解する方法は開発済みである」
【!】
「来るぞ!」
そして闇の大精霊が手をかざすと闇色の波動が無造作に飛んできた。