大精霊の器
「ニーニャがやられた? こいつに?」
俺は先ほど自分で倒した茶色い鎧をチェックする。
体長は四メートルくらいで、ゴリラ体型で、腕部が大きくできている。
組み合ってはいないが、パワーもそこそこありそうだ。
確かに強そうではあるのだが、それでもニーニャがやられるほどとは思えない。
「うーん」
唸りながら、それでも俺は気分をひとまず落ち着けた。
それはきょとんとした顔でドクターダイスがこちらを見ているのも無関係ではない。
「どうしたんじゃ?」
「いや別に」
焦ったところを見せても意味がないと自分に言い聞かせた。
そもそもニーニャがただでやられるわけがない。
本当にやられたのだというのなら、今まで以上の慎重さが必要だった。
「……さて爺さん。心は決まったか?」
「いや? 全然?」
「なら残念ながら、ちょいと強引にいかないといけない」
俺はそういう言って、さっき倒したばかりの茶色い鎧の頭部を拾ってきて、ドクターダイスの前に突き出した。
中々グロテスクである。
生物と機械部品が複雑に入り混じっているようだが、映像化するならモザイク処理が必須だろう。
「こいつは何なんだ? じいさん?」
優しく尋ねるとダイスは、青い顔になってぺらぺらしゃべりだす。
「これは、大精霊用の精霊器じゃ。属性は土じゃな」
「数はこいつだけか?」
「いや、雑用のただの精霊を入れた器が数百体。大精霊器は現在正常に稼働中なのは四体。今お前さんが倒したから残りは三体じゃな。それぞれの属性合わせて色とナンバーを振っておる。こいつはナンバー1じゃね。土の属性を持つ大精霊を入れた」
なるほど、だから茶色なわけだ。
地面の中からの奇襲といい、属性についても納得である。
「一般精霊は哀れだな。アレだろ? 爺さんを追っかけてた全身タイツがそうなんだろ?」
「哀れか? あれはあれで、戦闘員っぽくてかっこよいじゃろう?」
「結局戦闘員なんじゃないか……他にはどんな奴がいるんだ? まぁ色々属性がいるんだろうけど」
「そうじゃね。赤のナンバー2が火、緑のナンバー3が風、青のナンバー4が水ってところじゃな。本来であれば六体作る予定じゃったが……まぁまだ製作中じゃな!」
「……なんで六体?」
「そりゃあ……わしの名がダイスじゃから。六に引っ掛けたらかっこいいじゃろ? ダイスだけに」
「……そっか」
どうやらドクターダイスの世界では、サイコロは六面のものが多いようだ。
「あ、なんじゃそのかわいそうなものを見る目は!」
「はいはい。いやすごいのはすごいんだけどね」
一緒にされたくはないが、普段の俺を知る人がいたら同族扱いされそうだとかちょっと思った。