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ニーニャの探索

 ニーニャはダイキチと別れ、一人別行動で謎の町に入っていた。


 本当にここが記憶通りに精霊の森なのか?


 ダイキチと合流するか、一人で行くか悩んだが妙な胸騒ぎを感じて一人で探索を進めておくことにした。


 元は故郷、そんな思いがあったのかもしれない。


 しかし町に入ったら全くの無駄だったと考えを改めざるを得なかった。


【全然違う……】


「おいおい一体こりゃあ何があった? 幻の類かと思ったが、前とはまるで別ものだ」


 豊かだった森が、影も形も消えていた。


 代わりにあるものは黒い道に、金属の建物。


 はっきり言って、見た目で言えば、違う場所だ。


 しかしニーニャが混乱する一番の原因は、この町に漂う気配が関係していた。


【精霊様はいる……】


 精霊の森はその名の通り、精霊が沢山いるからその名が付いた。


 そしてこの町にも精霊の気配が以前のように、いや、むしろ以前より濃密にニーニャには感じられたのだ。


 ただ体内にいるマー坊は魔王のくせにそのあたりいまいちわかっていないようだった。


「精霊か。詳しくは俺様もよく知らんのだよな」


【……精霊様は、自然そのものの存在。大地や、植物、水や風。そして動物たち。そんなものの力が沢山集まって意思を得た者。ほんとは町にはあんまりいない。でも……】


「ここにはいるんだな。確かに妙だ。ここには精霊どころか生き物の気配すらないってのに」


【みんなの姿もない……】


 ニーニャはそう呟いて肩を落とす。


 森だけではなく、精霊の森に暮らしているはずのジン族の姿がまったくない。


 元々数が多い種族でもなかったが、村と呼べるものは存在した。


 ところが今はその名残すらない。


 それにさすがに近くにいれば気配位感じることができるはずなのにだ。


 本来なら、会いたいわけではないし、今でも気が進まないのは変わらない。


 ただ……こうも大きな異変が起こっていれば気にならないと言えばウソになる。


「さて、町の中をもうちょい見て回ろうぜ? 俺様ちょっとワクワクすんぞ?」


【……わかった】


 ニーニャは頷き、マー坊の提案に乗って町を探索することにした。


 そして歩き回る事30分ほど、大きなドーム状の建物が気になってニーニャは足を止めた。


「どうした?」


【でっかい】


「……そうな。いいのかそんなのに気を取られてて?」


【だいたいでっかい建物は大事なところ……そんな気がする】


「わからなくもねぇけど」


 マー坊のあきれ声の意味は分かるが、当てなくさ迷えば当てずっぽうになると思う。


 ここで何もなければ、ダイキチと合流するつもりだったニーニャだが、何ごともなくとはいかなかった。


 町の中で一番目立つ大きな建物を見上げていると、チンと妙な音が響く。


 ニーニャが気になって振り向くと妙な筒が地面からせりあがってきて、ニーニャを取り囲んだ。


 筒の扉が開き、出て来たのは奇妙な連中である。


「ギギギギギ」


「ギギギ」


「ギギギギギ」


【?】


 それは、さっきのおじいさんを追いかけていた全身タイツの連中だった。


 手に見慣れない銀色の物をもってニーニャに向ける。


 おそらく武器なのだろうが、それよりもニーニャはタイツ軍団の中身の方が気になった。


【……微かに精霊の気配がする?】


「おお、そうなのか?」


 マー坊に向けて視線を飛ばすと興味がある程度の反応でいらだった。


 そして、同じ格好をしたそいつらの他に、もう一人おかしな奴がいる。


 それは最初緑色の全身フルプレートの鎧鎧を着た人間かと思ったが違っていた。


 緑の鎧は人の鎧にしては大きく、何より生き物の気配がしない。


 そして代わりに感じるのは、もっと強烈な気配だった。


 ニーニャは思わずじっとりを汗をかき、芯が冷えていくのを感じていた。


 全身タイツ達が道を開け、そいつはゆっくりとこちらに歩いてくる。


 ズシ、ズシっととても重い音を響かせて、そしてはニーニャの前に立ち止まった。


「お前たちはよそ者だな? 抵抗せず速やかに投降せよ」


【貴方はなに?】


「この話し方は……ジン族の者か。逃亡か? ならばなおさら速やかに投降せよ。懲罰室に入ってもらう」


「結局同じじゃん」


 どこか気楽に構えていたマー坊だが、ニーニャは衝動的に動いた。


【……!】


 ありったけの魔力を込めて、魔法を使う。


 正面に炎の塊が現れて、撃ち出すと弾けた炎が道路を舐め、町中が火の海となる。


「えぇー……何やってんのお前―」


【黙って!】


 叫ぶニーニャはじっと炎の中を凝視する。


 手ごたえはあった。


 少なくとも周りにいたタイツ軍団は消し炭に出来たはずである。


 しかし、炎の奥からあの足音が聞こえた。


 平然と、煤すらつかずに立っている緑の鎧の目が輝き、腰を落としたのを見て、ニーニャは更に魔法を準備した。


「……ナンバー3。逃亡者を発見。拘束する」


 緑の鎧は動き出す。


 マー坊がようやく状況を理解して、声を上げた。


「すげぇな! アレを食らって傷一つねぇ! ありゃ、なんとなくパワードスーツに似てんな? 機械ってやつか?」


【……違う。アレは……アレからは飛び切り濃い精霊様の匂いがする】


「来るぞ!」


 目の前から緑の鎧は掻き消える。


 そして反応することもできずに、気が付けば、ニーニャは腰を片手で捕まれていた。


「捕獲完了」


【……!】


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