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PS ヒーロー始めました。  作者: くずもち
パワードスーツ起動編
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新しいメンバー

「ほぅ……。こいつはすごいな、このゴミ山にこんなものがあったとは」


 秘密基地に案内したシルナークの反応である。


 基地内を見て回るシルナークは未だかつてないほど愉快そうなので安心した。


『マスター。この方は?』


 そして見慣れない侵入者にテラさんは警戒しているようだが、無理もなかった。


「彼の名前はシルナーク。なんでか知らんけど、ドワーフの鉱山街で服屋をやってるエルフさんだ。変人と呼ばれている」


「おい。何でか知らんがゴミ山で変人をやってる変人に言われたくないぞ?」


『なるほど。二人とも変人ということですね?』


 なんだかテラさんからはひとまとめにされてしまったが、二人とも自覚があるのでスルーした。


 そしてシルナークは、さっそく本基地の目玉であるところの、パワードスーツに興味を持ったようだった。


「それでこいつが噂の白い鎧か。なるほど、変な鎧だ」


「変とは失礼だな君。異世界産でなかなか見れるもんじゃないんだよ?」


 それでなくともカッコイイと思うのだが、シルナークはパワードスーツをじっと観察し、次に俺を上から下までまんべんなく眺めて言った。


「それはそうだが案外異世界から流れつく物というのは多いんだよ。ところでだ。この鎧、少しお前のサイズには大きくないか?」


 俺はシルナークに思ってもみなかった部分を指摘されて驚いた。


 さすが服屋だ、一目でそんなことまでわかるとは。


「え? ああ、まぁ少しだけ。でもまぁプシュッて体に密着するし、動けないこともなかったよ」


「ふむ。では、こいつをつけて動いてみて、体に裂傷の類はなかったか?」


 更に指摘されて思い返すと、確かに筋肉痛の他にも、怪我があった。


 ドラゴンと戦ったから仕方ない、ちょっと色々ぶつけちゃったし、あたりの理由で納得していたのだが、指摘されると少し話は変わってきた。


「ああ、あった。少しあざにもなったかな?」


「ひょっとしてだがこの鎧、元は何か下に身に着けてから着込むんじゃないか? そこのところどうなんだ?」


 今度は俺とテラさんにまとめて質問が投げかけられる。


 俺は答えを持っていなかったが、なんとテラさんはシルナークの言葉を認めた。


『はい。パワードスーツを着込む際、生存率を上げるために衝撃吸収用のインナーウェアを着用していました。しかしそれについては現状失われた状態です』


「資料か何かはないのか?」


『あります。ライブラリーを参照ください』


 ピッと大型のディスプレイにインナーの資料が映し出されて唖然としてしまった。


 こんなのがあるとは知らなかった。


 それはゴムのような素材で、服の下にも着ることができるほどに薄いらしい。


 思いつかなきゃ調べられないのは、データの悪いところだと思います。


 シルナークはしかし、映し出された画面にも動じず、興味深げに眺めてから言った。


「そうか……ならば力になれるかもしれない」


「へ? そのインナー作ってくれんの?」


 まさかと俺はシルナークを見ると彼は頷いた。


「ああ。衝撃に強い素材なら心当たりがいくつかある」


 さすがに驚く。


 一目見てあっさり言ったシルナークに俺は確認してしまった。


「ちょ、ちょっと待った。ホントにできるの? あんまり高いお金払えないよ?」


「何を言っている。魔石が出たんだろう? 安心しろ、格安にしておいてやるさ」


「ホ、ホントに? いや、値段もだけどさ。SF的な異世界の代物だよ?」


 なんとなくゴム製っぽい服なんてこっちのしかもエルフが作れるなんて思いもよらなかったが、シルナークからは不思議そうな顔をされてしまった。


「SFが何かは知らないが、インナーだろう? 用途を合わせれば、別にまったく同じ物じゃなくてもいいんじゃないか? この装甲もいくらかは後付けだろうに?」


 シルナークはそう言ってリッキーの作った装甲を指した。


「そ、それはそうだけれども」


「ああ。なに、こちらから噛ませろと言い出したんだ。出来る限り協力はするさ。こんな面白そうなことを放っておく手はない。ドラゴンを単身で倒したんだろう?」


 シルナークは町の中でも指折りの変人だという事を感じさせる、実にいい笑みであった。


 そこまで言うのなら、俺としてももはや言う事はない。


 俺もまた町一番の変人らしく笑って、その技量を存分に振るってもらう事を決めた。


「それは利口な判断だ。俺なんてここのところ毎日が面白くって仕方がない」


「ならば私もそのおこぼれにあずかるとしようじゃないか」


 交渉成立である。


 俺達はがっちりと固い握手をして、パワードスーツをより完璧な物にすることを決めた。


「よしよしよし。なら一つ面白い情報がある! ここに来て引きかえすなんて言うなよ?」


「ほう。そいつはいいな。ぜひ混ぜてもらおうじゃないか」


 そこまで覚悟が決まっているというのなら話が早い。


 すでに騎士団が家に尋ねてきたことで、計画は次の段階に持ち上がっていた。


 町の噂から白い煙を出すオークについて調べていくうちに、俺はある名前にたどり着いた。


「それじゃあシルナーク、『蒸気王』という名前を聞いたことがあるか?」


「いいや、初耳だが?」


 シルナークは情報通だと思っていたが、やはりそこは服屋さんだ。意識して調べでもしなければ難しいこともあるだろう。


 情報収集に走っていた冒険者に顔の利く友人もそろそろ戻ってくる頃だった。


 リッキーが息を弾ませて帰ってきたタイミングは完ぺきである。


「ダイキチ! 蒸気王の話聞いてきた!」


「グッドタイミングだリッキー。さて新しい仲間が加わったことだし、作戦会議を始めよう」


「へ? 新しい仲間?」


 フフフ、秘密基地の円卓に二人は寂しいと思っていたところだ。


 さぁ、話し合いを始めるとしよう。


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