ついうっかり
「どっこいしょ!」
ドリルのしっぽをもぎ取り、本日十体目を仕留める。
ドンとロボットが爆発し機能を停止した。
しかしこいつら、中々にロマンの溢れた仕様で、ぜひ持って帰りたい。
「どうだろう? テラさん、このドリルだけでも持って帰らないか?」
『運用は可能です』
「おお! じゃあなんか、思いついたら使ってみるか!」
がしゃんともぎ取った残骸を放り出しながら俺は一息ついて地面に座り込む。
大方動くロボットもグレムリンも仕留め終わった。
町にも被害が出たが、間もなく収束しそうである。
「商店街でグレムリンに水使った馬鹿がいるってよ!」
「あっちにゃ肉体強化使える一団が腕まくりしてかけてったよ!」
「大体終わったから、土魔法使えるやつは修理始めてくれー。風魔法の使えるやつはでかいのが暴れたとこ行ってくれよ。撤去が思ったより大変そうだ」
「今回は中々だったなー。モンスターはあんなのもいるんだな」
「惚れたね。あの鳥っぽさと金属の重量感がなんとも言えない」
「勿体ねーから武器屋と防具屋に運べってよ」
「えー」
町の中にいたやじ馬たちも、そろそろ終わりそうな状況に解散を始めていた。
そしてすでに次の行動を開始しているようだった。
「たくましいなぁおい」
『こう言っては何ですが、危険なのでは?』
「そりゃあそうだが、自己責任だよ。素の俺よりパワーある奴なんて町の中にごろごろしてるんだ、自分の身は自分で守る」
『そういうものですか?』
「そういうものだよ、ここではさ」
非常事態の王都の強さは本当に尋常ではないので気にしたら負けだった。
たぶん明日にはほとんど変わらない程度に町は修復されているだろう。
俺は腰を上げ、とりあえず回収しやすいようにドリルのしっぽを一本持って店の前に落としに行く。
するとそこでふと、真新しい看板が目に入った。
立派な看板である。
「……」
そして俺はついバランスを崩しちゃうと、ドリルのしっぽがうっかり看板に衝突した。
「ウワー……シマッタ、ブツケッテシマッタノダー」
『マスター。それはわざとらし過ぎるのではないでしょうか?』
「いや、事故だ。事故だとも。よくあることだ」
そう言い張って、今度こそ俺は戦場を後にするのだった。