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PS ヒーロー始めました。  作者: くずもち
マリーの招待編
199/462

水のハンマーは威力がすごい

「よくやった。グレムリン共が邪魔だったんだよ」


 声をかけられ振り返ると、鎧姿のマリー様が手をかざしてこちらに歩み寄ってきたところだった。


「いや……こいつら倒しに来たんですけどね」


「はっはっは! 面倒を分担すんのが狩りの醍醐味ってもんだ。そうじゃ無けりゃ一人で来るだろ? それにしても焦ったぞ? まさか突っ込んでいくとはな」


「……ごもっともです」


 若干の不満は笑い飛ばされたが、俺の方が反省すべきか。


 やはりさっきのは、マリー様の魔法だったようである。


「よし、もう一発撃って、とどめ差しておくか。ちょっと待ってろ? こいつはちょっとために時間がかかる」


 そう言うとマリー様は水をどんどん出し始めて空中に浮かばせる。


 水は完全な球体となり、かなりの大きさに膨れ上がった。


「よしできた」


 軽く言って、マリー様が球体をすさまじい勢いでぶん投げる。


 水球がロボットに触れると、水とは思えない音がして、地面ごとロボットはひしゃげてしまった。


 バチバチと火花を上げて完全に沈黙したロボットを見て俺は青くなった。


 そんな俺にマリー様は歩み寄り、顔を覗き込んできた。


「しかしずいぶんと荒っぽいな店長。俺はてっきりもう少し慎重な戦い方をする奴だと思っていたんだが」


 それが俺の戦い方について行っているんだと気がついて、俺はアハハと笑うと、頭を下げた。


「……申し訳ない」


 うまく戦えたと思うのだが、魔法に比べたら危なっかしいと言わざるを得ない。


 マリー様からみて、さっきの戦いが効率的な物じゃないことはよくわかっていた。


 だがマリー様はニカっと笑い俺の肩をバシッと叩いた。


「謝る必要はねぇな。グレムリンも仕留めて見せた。何の問題もない」


「そうですか?」


「ああ。それに、戦ってるあんたを見て確信した。店長、あんたまだくすぶってるな? 戦いに未練がある」


 マリー様は俺の目を見ている。


 それはなんだか、内心を見透かされているようで、俺は落ち着かない気分になった。


「それは……」


「お前は私と同じだダイキチ! 迷いがあるなら私の部下になれ! この先いくらでも戦いを用意してやろう!」


 手を差し伸べるマリー様の目には圧倒されるほどの野心がみなぎっている。


 戦うために、戦力としてちゃんと誘われたことが何度あっただろう?


 ほんの何年か前なら、あっという間にその手を取っていたのだろうか?


 俺は一瞬考える。


 そうである気もするが、やはり違う。


 俺は首を横に振った。


「すみません。お断りします」


 貴族に逆らえば殺されることもあるなんて話も聞いたことがあったのだが、マリー様はさわやかに笑ってあっさりと手を引っ込めた。


「……そうか。なら仕方がない。よし、じゃあ帰って夕飯としよう! 狩りの後は宴だ!」


「い、いいんですか?」


 正直かなり不安だっただけに拍子抜けして思わず言ってしまったが、マリー様は当然だと頷き手招きさえして見せた。


「当然だ! つまらないことを言うなよ店長?」


「は、はい!」


「ああ。だが、さっきの誘いは今後も有効だ。気が変わったら来るといい」


「……!」


 なんというかあまりの自信に満ち溢れた態度に体にしびれが走ってしまう。


 シャリオお嬢様といい、王都の貴族はこんな人ばっかりかと俺は戦慄した。


 召喚された経緯で、あんまりいい印象は元々持っていなかったのだが、ここ最近イメージが変わりそうで困りものだった。


 とことこと俺の横を通り過ぎて歩いていった狐みたいなものがマリー様の後をついていく。


 俺がその姿をじっと見送っていると視線に気が付かれた。


「……なんです?」


「……いや、なんでもない」


 ぷいっとそっぽを向くコンちゃん……もとい怪盗フォックスはマリー様のこの辺りにやられたのではないだろうか?


 そんな疑念が頭をよぎるがもちろん確かめる方法なんて全くない事だった。


「さて、じゃあいくかな」


 事件も一段落。


 すべては終わった感じになっていた、俺達が、和やかなムードで外に出ようとした時だった。


 洞窟がゴゴンと揺れる。


「ん?」


「なんだ? 揺れたか?」


「揺れましたね」


 一体何事かと身構えた俺は、しかし洞窟の奥に一つ、また一つと灯る赤い光を見て青くなった。


 ドシャコドシャコと重い足音が無数に聞こえる。


「グギャギャギャギャ!」


 そして鳴き声も思いの他多く聞こえた。


 俺はゴクリと喉を鳴らす。


 マリー様はポリポリと頭をかいて、コンちゃんはすでにマリー様の方に避難中である。


「ど、どうします?」


 俺がマリー様にお伺いを立てると、彼女はきっぱりと言った。


「宴は中止! いったん撤退するぞ!」


 その言葉に異議などない。


 俺達は全速力で出口に走った。


 


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