戦いとは完全にはうまくいかないものである
「……!」
俺は剣を振りかぶる。
グレムリン達はそれぞれ分担してあのデカブツを動かしているらしい。
目を凝らせば、力の流れがはっきりと見えた。
もう、昔のように何もできないわけではない。
俺は戦い方を頭の中で組み立てる。
まずは主な攻撃手段である尾のドリルをしゃがみ込んで探し、やり過ごす。
そこからドリルが引っ込む前に走り出して、踏みつけを股下に滑り込んで回避。
腹の下に生えているグレムリンを斬れば、足の指令系統が死ぬ。
そして次に右わき腹から生えているグレムリンを仕留めれば尾が止まりほとんど動きが止まるだろうから、最後に胴体担当を仕留めれば終わりだ。
ここまで行動を組み立てて俺は高揚感と闘争心に身を任せた。
もはやここからは出たとこ勝負である。
尾をかわし、勢いをつけて股下に滑り込む。
尾は予定通り飛んできてくれた。そして、足の動きも計画通り、股の内側に滑り込んだ俺から微妙に狙いを外した。
舞い上がる土埃は俺の視界を奪い、振動で体がぶれる。それでも力いっぱい突き出した俺の剣は、グレムリンの喉を正確に切裂いていた。
「ギィエェ!」
「よし!」
さらに右脇のグレムリン狙うために、地面を転がる。
がくんとバランスを崩したデカブツに潰されそうになりながら、股の下から脱出した俺は、右脇のグレムリンを斬り上げた。
しびれるような手ごたえでグレムリンをバッサリと胴体から両断した瞬間、俺の脇に振り下ろされたドリルの尾が、真っ逆さまに落ちて来た。
「うお!」
風圧にあおられながら、続いて俺は完全にバランスを崩したロボットの装甲を駆け上がる。
案外凹凸のあるロボットの装甲は思った以上に上りやすく、理想的な速さで最後のグレムリンにたどり着く。
俺はグレムリンを見下ろし。グレムリンは冷や汗をかいて、俺を見上げている。
勝負はついた。
「これでラスト!」
「ギギ!」
力いっぱい突き下ろした剣は確実にグレムリンを仕留めた。
そのはずだった。
しかし、予定以上にうまくいったのはここまで。誤算はこの後だ。
「うお!」
グレムリンは確かに倒したはずなのに、ロボットは再び動き始めたのだ。
「嘘だろ!」
俺は振り落とされて地面に落ちた。
そして動き出したロボットは、単純に本来の機能として動いているのだと気が付いても、俺にはもはやなすすべはない。
「ぬぐ……」
地面にたたきつけられた俺は衝撃と痛みで動けない。
あ、死んだこれ。
ちょっと今までの人生が走馬灯となって流れ出したその時、大量の水がさく裂して、滝のように俺の上に降り注いた。
「よくやった! そいつらが邪魔だったんだ!」
「マ、マリー様……か?」
びしょびしょになった俺は起き上がりどうなったのか確認すると、巨大なロボットは巨大なハンマーにでも叩き潰されたかのようにぐしゃぐしゃになって、壁にめり込んでいた。