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PS ヒーロー始めました。  作者: くずもち
マリーの招待編
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森のモンスター

「さて、行くとするか!」


「え!? 今すぐにですか!?」


 食事が終わるとすぐにそう言って鎧を用意させるマリー様に俺は驚愕した。


「なんだ? まだ食い足りないのか?」


「そういうことではなく! え? 今トレーニングから帰って来たばかりなのでは?」


「ああ。一休みしたし食事も終わった。なんか問題あるか?」


「……そうですね。ではお供させていただきます」


 そういうと俺の膝の上にいたコンちゃんもぴょんと飛び降りマリー様について行く。


 俺も拒否する理由は思いつかずに後に続いた。


 今から行けば、日が暮れる前に終わらせることができるかもしれない。


 突然のことで準備は心もとないが、ほとんど旅支度したままだったのは助かったと言えば助かった。


 そしてマリーお嬢様は屋敷を出る時、宣言する。


「今日は供の者はいらん。騎士団にはモンスターの討伐に行くが、単独で行動すると連絡しておけ」


 これにはさすがに、屋敷の使用人さん達もそろってギョッとしていた。


「さて、店長。これからはダイキチと呼ぶがかまわねぇか?」


「ええ、そりゃかまいませんが」


「じゃあダイキチ、馬車を扱った経験は?」


「ありますよ」


「ならいい。じゃあこいつに乗って南門から森に出るぞ。騎士団にモンスターの討伐依頼が出ていたはずだ」


 これは拒否しても、行くことになりそうだ。


 マリー様の肩の上に担がれて、コンちゃんがニシシと笑う姿はまるっきりいたずら狐だった。



 御者台に上り、俺は軽く息を吐く。


 さすがは貴族専用車両。馬も大きく毛並みがいいし、馬車本体も作りがしっかりしていて、装飾にも細かい職人の技が光っている。


 車で言えばロールスロイスか。壊したらそれだけで人生が終わりそうだ。


 ゴクリとつばを飲み込んで、俺は慎重に馬を走らせる。


 目的地はモンスターの潜む森とは、今日は厄日かもしれないと俺はそう感じ始めていた。




 ほとんど顔パスで城壁を抜け、南の森にやって来た俺達は森の入り口に馬車を止め、森の中を進む。


 先頭は俺、そしてその後ろにマリー様と抱かれたコンちゃんという構図である。


 俺は鉈で枝を払い、後続の道を作ることを買って出た。


「今日の狩りはグレムリンだ。ザコだが油断できねぇ相手だぜ?」


「うわー、グレムリンですか? めんどくさいですね」


「ああ。だが、今回はちょうど良い」


 何がどうちょうど良いのかわからないが、グレムリンというモンスターは、いうなれば森に潜む小柄なゲリラだ。


 罠を使い、武器を使い、力はないが悪知恵は働く。機械を扱うという話もあるくらいだ。


 そして何よりすぐ増えて、一匹見かけたら側に数十匹は潜んでいると思った方がいい。


「一説によると、満月の晩に分裂するって聞きましたよ」


「しかも元の個体の学習した知恵を継承するらしいってのが最新の研究だ。劣化が激しいみたいだが」


「ああ。道理で小賢しいわけだ」


 油断すると熟練の冒険者でも手痛い目にあわされる、グレムリンはそういう相手だった。


 いなきゃいいのにと思ったが、すでにいくつかの痕跡は発見していた。


「結構いますよこれ? 足跡と、偽装跡が結構あります」


 手に入れた情報をすぐにマリー様に伝え指示を仰ぐと、補足情報が帰って来た。


「ああ。聞いた話じゃ、三十匹は堅いらしい。王都から近いから緊急だ」


「こういう小物を狩るのは戦士団がうまそうですけどね」


「ああ。だがまぁ大物もいるらしいからな」


 マリー様のセリフを聞いて、マジかと、俺は口の中で呟いた。


 騎士団に依頼が行くということは、大型の個体か、もしくは何か別の者に使役されている可能性だってある。


 そうなってくると、危険度がさらに跳ね上がってくる。


「なんにせよ、だいぶん警戒せにゃまずいですね」


 一番厄介なのは組織だったグレムリンが使う罠は、結構高度だということだ。


 例えばこのように。


 俺は適当な石を持って投げるとボスと穴が開いた。


「落とし穴か。よくわかったな」


「まぁ、奴ら詰めが甘いですからね」


 中には適当ではあるが、折れた剣が無数に刺さっていて、結構頑張ったようだが偽装の仕方が拙い。


 もう少し自然に罠っぽさを消さないと、野生動物には通じまい。


「それでも夜には相手したくないもんです」


「夜なら引っかかるのか?」


「運が悪ければ。危ないですからできれば撤去した方がよさそうですね」


「ああそうだな」


 愉快そうにマリーが笑う。


 何がしたいのかわからないが、とりあえず役に立っているようならついてきたかいがあった。


 前方五十メートルほど先に、俺は生き物の気配を感じて息をひそめた。


 鬱蒼と茂る森の中を注意深く観察すると、そこには子供くらいの背丈で動き回る茶色いモンスターの姿があった。


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