ヒーローっぽいプライドの結果
「……疲れた」
『お疲れ様です』
それはプライドの問題だった。
壊れた転移ポータルは修理もできず、パワードスーツならいけるだろうと聖都から見切り発車で飛び出したのがまずかった。
テラさんは位置を把握しているという話だったし、行けると思ったのだが。
「……まさかの2週間。長旅だよ、思いのほか長旅だったよ」
『パワードスーツの全力での連続稼働時間を大幅に更新しました。単調でしたが実に有意義なデータです』
「そう? ならまぁ意味はあったかな、途中で呼ばれるかと思ったけど、そんなこともなかったしな」
『特に問題もなかったようですので』
「……呼んでくれたら楽に帰ってこれたんだけどな」
一応、緊急事態に長距離を一方的に呼び出す笛型の転移装置もあるにはあったが、そう言うとテラさんからはお叱りを受けてしまった。
『マスターは緊急転移のリスクを軽視しすぎています。小型装置による不完全な転移は事故の元です、緊急時以外は禁止だとニーニャ様やトシ様に伝えていたのはマスターだと記録に残っていますが』
「そうだった。まぁ、無事帰ってこられたんだからよしとしておこうか」
ようやくたどり着いた城壁を見た時は泣きそうになってしまったが、まぁそれも今はいい思い出だろう。
俺達はこっそり城壁を飛び越えて、王都へ潜入し、ようやく普通の服を着て店へ戻る。
天気は生憎と曇り空だが、曇りもそう悪くはない。
慣れ親しんだ王都の道を足取りも軽く歩いていると、店に近づくたびに心が弾んだ。
とりあえず体の垢を綺麗に落として、おいしいものをたらふく食べよう。
だがたどり着いた店は、どう見てもいつもと違っていた。
「……あれ?」
ざわざわと人だかりができていた。
天気も下り坂なのに今日も我が店舗は大繁盛で何よりだが、俺の店があった場所には、元あった建物より倍近く大きく増改築が施されていた。
「なにごと?」
高い建物をあんぐりと口を開けたまま見上げる俺の目には大きな看板がある。
そこにはデカデカとこうあった。
『異世界雑貨店リッキー&シルナーク』
「……!」
絶句する俺にテラさんが答えた。
『店舗の全権を任されたと聞きましたので、指示に従いました』
「……いやいや、任せたけれどもさ」
物には限度というモノがあるのではないだろうか?
しばらく見ない間にまぁやってくれたものである。
俺は大慌てで店の扉に突撃し、荒々しく開け放とうとしたが、俺は店の前にいた黒服の強面の人にがっちり両脇を固められてた。
「へ?」
「申し訳ありませんが、その恰好では店内に入ることはお断りさせていただいております。他のお客様もいらっしゃいますので」
「……!」
まさかのドレスコード導入?!
ペイっと外に出されて俺は空を見る。
空にはいつの間にか暗雲が立ち込め、遠雷の音がした。
ぽたりと雨粒が俺の疲れ切った体を打ち、俺は崩れ落ちる。
そして疲労の奥底から湧き上がってくる無力感のままに呟いた。
「……店、乗っ取られた!」




