聖女様は力を溜めている!
なかなかいい話だったのではないかと思う。
ツクシがベルジュ君を励まして奮い立たせたのは間違いない。
ただ少し気になったのは、最後まできちんと話が終われたことだった。
そう長い時間ではなかったのも確かだが、それでも思う。
聖女様が動かない。
「……」
変形した聖剣を掲げたまま微動だにしないが、聖女様が何かしているのは明らかだ。
剣の光はどんどん強くなり、聖女様の脚の下にある湖までも輝いている。
何をするつもりなのかわからないが、危険なことだけが分かるのは、例えるなら起動している爆弾が目の前にあるようだった。
しかしビビっていたって仕方がない。
俺はとにかく一撃入れようと、飛び出した。
だが俺のファーストアタックは思いもよらないところで、弾かれた。
湖の境界に足を踏み入れた瞬間、硬いものに追突して、ぶっ飛ばされたのだ。
「むぎゅ!」
あっけなく振り出しに戻されてクワンクワンと痛みで頭が回る。
俺は鼻血の心配をしながら余りのカッコ悪さに頭に血が上った。
「ロボ! そういうのはだめだぞ! 」
へっとちょっと面白そうに笑ったツクシはたぶん気のせいではない。
知っていたなら教えてほしいものだった。
ツクシは聖女様をじっと見ながら言った。
「守りは相当堅そうだぞ……でもたぶんアレはそれだけじゃない」
「例えば……何でありますか?」
即理由を聞きに行ったベルジュ君は中々勇者だ。
するとツクシは考え込んで、ポロリと予想を口にした。
「そうだな……爆弾とか? このまま力を溜めに溜めて、ドカンと行く気じゃないか?」
「……」
冗談のつもりだったのだが、ツクシも似たようなことを考えたか。
当たってほしくはないが、こういう時のツクシの予想は当たる。
実際やってしまいそうな話の流れもあって、ごくりと喉が鳴ってしまった。