救援要請
「おーそっか! ベルジュは僕に会いに来たんだな!」
「は? いえいえ、私は聖剣の勇者にですね」
「だから僕がそうだ! ラッキーだな!」
ムフンと鼻息を荒くし、両腕を腰に当ててすごいんですアピールをするツクシに、ベルジュは疑わしそうな目を向ける。
そして俺を見るわけだが、俺は一度だけ縦に頷いて見せた。
「いや、しかし……彼女がでありますか?」
「そうだよ。勇者には見えないか?」
「いえ……そういうわけでは」
いや見えたらおかしいだろうと、俺は心の中で呟いた。
しかし全ては事実である。
ツクシが俺と話していたベルジュ君の肩をポンポンと叩くと、彼はビクリと身をすくませた。
「そうだぞ! ちなみに聖剣っていうのはこれだな!」
シャンと腰の剣をツクシが抜く。
いつ見ても美しい剣は、ツクシが魔力を流すと光始めた。
先ほどベルジュ君がやったパフォーマンスの焼き直しだが、聖剣使いであるところのベルジュ君にはかなり効果があったらしい。
口を開け愕然としているベルジュ君からは完全に侮りが消えていた。
「コホン……失礼いたしました。聖剣の勇者様……あの、お名前は?」
「春風 ツクシだぞ! よろしくな!」
気楽に挨拶したツクシに対してベルジュ君は即座に片膝をつき頭を垂れた。
この豹変ぶりを見るに、思っていたよりも効果は抜群だったようだ。
「はっ! ありがたき幸せ! しかし、それほどの聖剣がこの世界にもあるのでありますね。剣の輝きを拝見しただけでも、すさまじい力を感じ取ることができました」
「お? そうなのか? ベルジュのまねをしてみただけなんだけどな?」
まぁ剣を光らせただけで力の証明になるなんてことは今までにはなかった。
聖剣と言えば、魔王を攻撃できる武器で、何でもよく切れる不思議な剣以上の情報はない。
力に関しても、ツクシがその辺のなまくらでもスパスパ切るため、それがツクシの力なのか、聖剣の力なのか正直よくわかっていないというのが周囲の共通認識だったっりする。
「やっぱりそうか」
【やっぱり】
俺とニーニャはそうだろうなと頷いたが、聖剣に関して、ベルジュ君には俺達が見てわかる以上の情報があるようだった。
「ええとても大きな……それこそ聖都にいらっしゃる聖女リリン様に匹敵するほどのお力だと思います」
感動して、胸元で自分の手を握り締めているベルジュ君は涙を流しそうな勢いだった。
しかしまた新しい名前が出て来た。
聖都に聖剣士ときて聖女。
なんだかとってもまぶしそうな感じのネーミングセンスで、気後れしてしまいそうである。
ベルジュ君は顔を上げツクシを見上げる。
そして懇願した。
「なにとぞ……ツクシ様のお力を貸してはいただけませんでしょうか? 我が主、聖女リリン様を救うために」