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おとこのこだったよ

「な、なぜ毒を……」


 口元を押さえ、泣きそうな顔の金髪君は周囲の様子を伺い、俺達から離れた位置に陣取って、腰の剣を抜いた。


 だが俺はさっそく訂正させてもらった。


「毒じゃありません。回復用のポーションです。ホラ、体の調子がいいでしょう? 俺の作るポーションは本気を出すと滋養強壮にも効果があるんです。三日は寝なくても余裕なほどです」


 地味にセールスポイントを並べると金髪君は戸惑っていた。


「そういえば体が軽いような気が……いや! ここはいったいどこなんだ!」


「ここは王都の雑貨屋ですよ。そして俺は今のところ敵じゃない」


「……ではなぜ毒を?」


「しつこい。毒ではありません。お前体調良くなったら料金請求するからな?」


「そうだぞ? だいきちの作る薬は、味は毒よりヤバいと言われるけど、そりゃあよく効くんだぞ! あやまれ!」


「いや、ツクシ。お前、今毒よりひどいって言わなかった?」


「……細かいことは気にするなよ、だいきち」


 結構話題の中心だった気がするが話自体が脱線していたのは間違いない。


 今度はもっと果物でも使ってみるかと、改良案を考えつつ、聞くべき話を聞くことにした。


「ではツクシさん? 連れてきた責任を取ってきちんと話を聞いてあげてください」


「え? 僕が? わかった……じゃあ、剣を下ろすといいぞ! キミは王都の人間じゃないんだろ? 何しに来たんだ?」


 と、なんともトラブルの匂いのする発言を聞いて、俺はツクシを二度見した。


「そうなのか?」


「うん。だからここに連れて来たんだ」


 それ絶対大丈夫じゃない奴だろう。


 最近どうも軍属じゃないことをうまい具合に使われているような気がしているのだが、そこは言っても仕方がない。


 トラブルなら上等である。


 金髪君は質問をされ、どうにも何かが違うという空気を察してくれたらしい。


「……そうか。私は貴方がたに助けられたのですね」


 複雑な表情でようやく剣を下ろした金髪君は、鞘に剣を戻して、頭を下げた。


「……ありがとうございます。私の名はベルジュ。こことは異なる場所、聖都よりやって来た騎士見習いであります」


「聖都? 聞いたことあるかツクシ?」


「ないぞダイキチ」


 王都が、王都で通用するのは、近隣にほかの国がないからだと聞いたことがあった。


 つまり他に国がないから差別化する必要がない。


 何かの間違いかとも思ったが、ベルジュは静かに首を横に振る。


「……それは無理もありません。聖都はごく最近ここへやってきたのですから」


 わからないですよねと、少しだけ弱り顔のベルジュの言うことは、俺達にはよくわかった。


 なるほど、国か都市か、そういうものがここにやって来たのか。


 本当なら大変な事態である。


 しかしまぁ……来てしまったものは仕方がない事だし、それよりも俺には気になって仕方がない事があった。


「なるほど……だがちょっと待ってくれ、本格的に本題に入る前に一つだけはっきりさせておきたいことがある」


「……はい、なんでしょうか?」


 俺の真剣な表情で、気を引き締めるベルジュに俺は質問をぶつけた。


「ベルジュは、男なのだろうか? 女なのだろうか?」


 ツクシがなるほど! っと力強く頷く。


 ベルジュはポカンとしていたが、質問がようやく頭に浸透すると顔を真っ赤にして怒鳴った。


「男です!」


 へー。なるほどそうか男か。ベルジュ君だな。


 そういうこともあるんだなと思った俺の予想は女の子であった。あぶなす。


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