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だいきち印の薬草汁

「だいきちぃぃぃ!」


 俺は転がるように店の中に入って来たツクシを受け止める。


 どすっと重い体当たりだが、今日はいつもよりも重さが二倍ある気がした。


「いや、気のせいじゃない?」


 二倍というか人が二人いる。


 気を失っていたが、俺の腕の中にいるのは、金髪の美少女か、美少年だった。


 歳はツクシと同じくらいに見えるが、赤い鎧で武装しているところを見ると、一般人というわけでもなさそうだ。


 種族はおそらく人間。耳は尖っていないが、顔立ちはエルフのように整っている。


 俺は初めて見る顔を凝視して唸った。


「うーん。どうしたんだツクシ? どっかの王子様でも拾ってきたのか?」


「違うな! 誰だかわからんけど、モンスターに襲われてたのを拾って来たんだ!」


「……それをなんで家に連れてくる?」


「朝ごはんのついでだぞ! 昨日は夜キャンプだったんだ!」


「へぇ、ツクシも壁の外に行ってるのか」


 基本的に町の外は騎士団が回っているはずだが、今はツクシ達新撰組も、外にも駆り出されているらしい。


「うん! まぁ手が足りない時は頑張るぞ!」


 ツクシは昨日も元気に頑張っていたようだ。


 勇者は魔王を倒した今も、大活躍のようだった。


 でも、それで毎度人を拾って困れても相当困る。


 俺は、だいたいこういうのは国なりなんなりが世話をするんじゃないのかよと、本気で心配になった。


「まぁ。連れてきちゃったものは仕方がないか……」


 本当なら、正式な回復魔法の使い手に見せるのが筋なんだろうけど、緊急なら少しまずい。


 怪我をしているのならなおさらすぐに治療が必要だろう。


 俺はひとまずツクシに指示を出す。


「とりあえず二階の俺の部屋のベッドに寝かせとけ。すぐニーニャ連れてくるから」


「わかった! あと、ダイキチ特製薬草汁もな!」


「……回復ポーションな。薬草汁とか変なニックネーム付けないでください。回復魔法があればいらないだろう?」


 ニーニャが回復魔法を使えば、たいていの怪我は治るはずだ。


 しかしツクシは断固として譲らない。


「いるから! すぐ持ってきてな!」


「?」


 何でそんなものが必要かはわからないけど、とりあえず言われた通りにポーションの調合を始めた。




「できたぞ」


 俺が出来上がったポーションを持って寝室に行くと、ニーニャとツクシが、気絶している金髪君を挟んで座っていた。


 もうすでに治療は終わったのか、金髪君は穏やかな表情で寝息を立てていた。


「ご苦労様。悪いなニーニャ。朝から」


 朝から早々に一仕事頼んでしまったニーニャをねぎらう。


【かまわない】


「おお! 作って来たかダイキチ! じゃあさっそくこいつにその薬草汁を飲ませよう」


「いや待て。寝ている時に飲み物なんて危ないぞ? それに回復魔法はかけたんだろう?」


 それだったら少しすれば目も覚める。


 しかしツクシはニコニコ笑顔でポーションを受け取ると、小さなスプーンで液体を取り出して、金髪君の口の中に突っ込む。


 そして三秒後。


「……うにゃあ!!!!!」


 金髪君は跳ね起きて、ベッドから転がり落ちていた。


 ニーニャはその効果に満足そうに笑う。


「うん! 今日もダイキチ印の薬草汁はよく効くな!」


「……いや、ポーションな。気付け薬でもねーから」


 釈然としないが、床を転がる金髪君が緑の泡を吐いているので、俺は水も持ってくることにした。


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