店内の雑談
王都の中はヨーロッパのような街並みが広がる、なかなか趣ある都市である。
石工が発達した石の文化が、町のいたるところで見られ、石畳が敷かれた道に石で作られた建物は散歩しているだけでも、軽い観光になるだろう。
そして極めつけの町のどこからでも見える巨大な白亜の城には、貴族と王族が住み、この都を守護しているらしい。
強力な魔法使い達が中心になって作られたという都市はこの世界に存在する様々な人型種族の文明的な交流地となっていた。
「ありがとうございましたー」
食事を終えて今、店から出ていった背の低い二人組はたぶんドワーフ。
店の外を歩いている男女は、耳がとがっているからエルフだろうか。
この辺りは鉱山街でも見る顔ぶれである。
俺は誰もいなくなった店内でぼんやりしていた。
「最初見た時は結構驚いたもんだが、俺もなれたもんだな」
ただ家にいるニーニャや、トシはまた違う種族で、俺もまだまだ驚かされることがある。
「同じように見えても、なんかちょっとずつ違ったりするんだよな」
今までの経験から、なんとも奥が深い異世界に思いをはせていると俺の独り言にテラさんが割り込んできた。
『無理もない事だと考えます。ここは様々な異世界から漂流物が流れつく世界です』
「まぁ……異世界っていうのがそもそもよくわからないし、何が流れついてもおかしかないわな」
『というよりこの世界にあるものはすべてが流れ着いたものだと考えるのが妥当です』
「どういうこと?」
ちょっと暇だった俺はテラさんの考察に耳を傾ける。
『そのままの意味です。この世界にあるすべては他の世界から流れついたもので構成されているのでしょう。長い時間をかけて、今の形になっている。マスターが現地人だと思い込んでいる王都の魔法使いも、過去、どこかから流れついたのかもしれません』
テラさんの言う可能性はもちろんあるだろう。
しかし確かめる方法はないし、それがどうしたという話でもあった。
「まぁそうかもなぁ。なんか他にもいいものが流れ着けばいいよな」
『そうですね。もう一つくらい私の世界から軍事施設でも流れてきてくれれば、アップデートもできるのですが』
「ははは、テラさんってたまにスケールでっかいよね。……テラさんは今のままでも十分素敵さ」
『ありがとうございます。ご期待ください』
乾いた笑いが店内に響く。
まぁどうせなら面白いものが沢山流れてきてくれればいいのだが、そんなにうまくはいかないだろうなと俺はそう思った。