目が覚めると知ってる天井だった
「ん……」
「お、目を覚ました」
「ふむ。死んでいなかったか」
俺が目を覚ますと、そこはゴミ山の小屋だった。どうやらあのまま気を失って、リッキーとシルナークに運ばれてきたようだった。
「まったく、張り切るのもけっこうだけど、やりすぎると死んじゃうよ。持って行ってた機材はちゃんと回収して来てるから、後でテラさんと確認しておいてよ?」
「あーすまん。運ぶの大変だっただろう?」
リッキーは肩をすくめたが、俺とトシ、二人と合わせて機材の運搬までとなるとなかなかの重労働だっただろう。
さぞや苦労を掛けたのではないかと心配していると、二人は顔を見合わせた。
「いや、大したことはしてないしね」
「そうだな。怪力の運搬係がいたからな」
「怪力の運搬係?」
俺は心当たりが全くなかった。
リッキーとシルナークは苦笑を浮かべ、視線で俺を誘導する。
するとそこで俺は洗面器をもって元気にちょこまかしているトシを発見した。
トシの動きは軽快で、疲れている様子もないのはさすがにあり得ないんじゃないだろうか?
「……!」
俺が固まっていると、トシは駆けよってきて俺を見た。
「大丈夫か? ダイキチ?」
「……トシ。お前こそ……大丈夫なのか? てか、痛い所とか全くない?」
「ない」
「……そうか」
とりあえず俺は起き上がっただけで全身痛くてたまらないのだが。
トシは元気に頷き、言った。
「ダイキチ起きた! オレ、穴掘ってくる!」
「……さすが穴掘りマスター。休憩はこまめにとるんだよ?」
洗面器をツルハシに持ち替えて、元気に地下に向かうトシを見送ると、場の空気は完全に解散する感じだった。
「よかったよかった。ニーニャちゃんは後から来るから。ああ、ゆっくりでいいって言ってあるよ」
「……うん。間違いなくゆっくりでいい」
「今度また、あの転移するアイテムを使わせてくれ。今回の報酬はそれでいいぞ?」
「……おうとも。弾ませていただくとも」
俺は今回すべてを成し遂げたはずだった。
なのになんだろう。この試合には勝ったけど勝負には負けた感じ。
「俺は今……試されている」
異世界とかにではなく自分自身に。
しばらくしてニーニャはやって来たが、怪我の具合を見ると怒りの思念を何度かたたきつけられた。