黄金髑髏は勝ち誇っている
「グオオオオオ!!!」
黄金髑髏は砕けている顎を大きく開き、咆哮した。
とたん、ダメージが蓄積していた黄金髑髏の全身が今まで以上の勢いで黒く燃え上がり始めた。
周囲の岩場が急速に砂化して、すさまじい勢いで力を吸収するのが俺の目には見える。
「うお! 急所がふさがっちゃまずいだろう!」
修復される頭蓋骨を見て、俺は慌ててスタートを切った。
全身黒く燃え上がった黄金髑髏の姿は地獄の蓋が開いたようだ。
俺を迎撃するため、黄金髑髏の炎がヒュンと鳴り、伸びる。
さっきの鞭攻撃が来ると確信した瞬間、俺は念じた。
「駆けろ!」
足元に足場が形成され、空中にいる俺のすぐそばを無数の鞭が通り過ぎてゆく。
俺はこの時、二段ジャンプの完成を見た。
元の忍者式紙の中敷きでは再現できないフィット感が素晴らしい。
そしてもちろんこいつは二段程度では終わらない。
トトトンと立て続けに空中を跳ね、体を捻って鞭の結界を通り抜けた俺は背筋を駆け上る快感に打ち震えた。
「ハハハハ! 見たか! 必殺ハエ機動戦法!」
縦横無尽に空中を動くパワードスーツを止められるものなら止てみるがいい!
さながらそれは部屋を跳ねまわるスーパーボールのようで、自在に出現する足場と、パワードスーツの強力なバネは、高速かつ不規則な動きを実現させた。
だが時間は厳しい。
すでに炎の中で、三面六臂の化け物のシュルエットが完全な姿を取り戻しつつあるのが見えたからだ。
「……頭蓋骨は厚いぶん、薄くなっててくれないものか?」
『その確率は極めて低そうですが』
チャージはすでに終わっている。
黄金髑髏を仕留められるとしたら今ここしかチャンスはない。
俺は両腕を突き出して、目の合った巨大頭蓋骨に狙いを定めた。
しかし―――。
「ぬお!」
発射の直前、ドンと見えない圧力に俺の体は跳ね飛ばされていた。
全身がバラバラになりそうな圧の正体に気が付いて、俺は血の気が引いた。
仙術の……衝撃波!
してやられた!
そう思った時にはすでに俺は地面に転がっていた。
「くそったれ……! ここで新技か!」
そうしている間にも急速に黄金髑髏の身体が回復してゆく。
それどころか今まで以上に禍々しい姿に変化している黄金髑髏は暗い炎の中から一層眩く輝きながら、姿を現した。
「カカカカカ!」
憎たらしく笑う黄金髑髏は勝利の宣言のつもりなのか、俺を見下ろし歯を打ち鳴らした。
絶望しかけた俺はその時、ようやくすぐそばまで来ている誰かの気配に気が付いた。
そして空と地面に強力な力を感じとって、叫んでいた。
「……直接は絶対触れるなよ!」
とたん黄金髑髏の足場が派手に崩壊する。
そして空には真っ黒な翼を広げた女の子が真っ白な魔法塊を掲げて、黄金髑髏に落っことした。
「テラさん!」
『発射します』
俺は叫びながら飛び出し、限界まで貯めていたチャージを解き放った。