ラストアタック
『今回の新装備は、威力においては過去最高の物です。前回の戦闘を教訓に、より遠距離から相手を殲滅するために制作されています。問題点は攻撃力が高すぎることでしょう。過度な使用は控えて……』
テラさんの説明は、黄金色の腕が煙の中から飛び出してきて中断された。
黄金髑髏はまだ動いていた。
全身から煙を吹き、腕も何本かは半ばから砕けている。
それでもすぐさま炎が体を包み再生は始まっているのだから、冗談じみた再生力だ。
「テラさん……何か言ってくれ」
『……マスターはわざと勝てない相手を選んで戦闘をしているのでしょうか? だとすれば理解しかねます』
「いや。そんなつもりはないんだけどな……しかし、あれでもダメか」
今の砲撃はテラさんの解説通り、並の威力ではなかった。
決着がつかなかったのはもちろん問題だが、完全に通用しないわけではないのが分かっただけでも上出来だった。
要はあの石を破壊すればいいのだ。
今思えばソンの最初の攻防もあの黄金髑髏の身体を破壊できるのか試していたのかもしれない。
テラさんはやはり、今回の相手を見て驚いているようだった。
『あの生命体はかなりの脅威ですね。人類の脅威になりえます』
「あれでも万全じゃない。付け入るスキはあるさ。テラさんさっき以上の威力は無理か?」
一応口に出して確認すると、テラさんの返答にはタイムラグがあった。
『……あれ以上というと、至近距離からなら、多少はエネルギーのロスを軽減できます』
「ああ。なるほどな。……相手の急所もわかってる。ダメージがあるならやれるか?」
出来ればゼロ距離で、さっきのを頭に直接叩き込む。
実行できれば強力そうだった。
だがあまりに問題の多さに俺はぺたりとヘルメットを触った。
「まぁ、近づくのが何より危険だな。砂になる」
『アレを至近距離で炸裂させるのは極めて危険です』
「そうだな……それで、どうやって近づくか」
『撤退を推奨します。が、行くのであれば、機動力の面でも改良を施しています』
「へぇ。もっと速く動けるって?」
『違います。靴底に特殊塗料で忍術の再現を試みました』
俺が思い出したのは、忍者の里でもらった、忍具を作る特殊なインクの事だった。
とりあえずやってみるしかないかと思っていたが、テラさんはまだ俺の喜ぶプレゼントを残しておいてくれていた。
俄然やる気が出てきた俺の声は弾んでいた。
「おお。そっちも行けたか! ……なら試してみないとな」
『安全面を考慮して、新兵器のテストはしてほしいものです』
「何言ってんだ? 新兵器はぶっつけ本番でお披露目が王道だろう?」
『意図的にそうするのは推奨できません』
「ははは! 冗談だ! 俺だって命がけなら万全の状態でのぞみたい! だが人生はままならない!」
うまくいっても次がラストアタックだ。
幸い、最初に呼吸が整えられるだけ、優しい戦場ではあるのだろう。
俺は深く息を吸い込んで気を落ちつける。
体に力を入れるだけでなく周囲からありったけの力を集めて取り込んでゆく。
身体が燃えるようだ。
血が心臓に押し出されるのと同時に、外から取り込んだ力が体中をめぐっている。
これはいい。パワードスーツを着た時の振動もテンションが上がるが、俺自身が戦いに備えている実感がある。
「さてここからが本番だな!」
『いつものことですが、安全性の欠片もありませんね』
俺は両手を地面につき、腰を上げてクラウチングスタートの姿勢を取った。