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テラさん自慢の必殺技

「行くぞ!」


 俺ガツンと拳をぶつけると、両腕から激しい電撃が迸る。


 エレクトロコアが唸りを上げるたび、放電はスーツの表面を激しく走り回っていた。


 走り出した足元にバシっと地面に光が走り、いつも以上に加速する。


「さて大見え切った手前、後に引けんぞー……」


 勢い的には後に引けないどころか、撤退すらできそうにない背水の陣だ。


「まずは小手調べといこう!」


 俺は手短な岩を蹴り砕き、散弾のように砕けた破片が黄金髑髏に向かって飛んで行く。


 しかし伸ばされた手に触れた瞬間、岩は砂になる。


 ダメージになっている様子はない。


「チッ。やっぱ砂になるか……ならでかいのならどうだ!」


 あいつは直接触れない。ならばさらなる遠距離攻撃を試してみるべく、俺は適当な岩にしがみつき力を込めた。


「ぬおおお!」


 俺はズドンと大岩を無理やり持ち上げたまま飛んだ。


 真上から狙いをつけて、黄金髑髏に向かって投げつけた。


 小山のような大きさの岩がまっすぐ黄金髑髏に落ちてゆく。


 さすがに反応した黄金髑髏は岩に向かって吼えた。


「ギィィィ!!!」


 二本の腕で大岩を支え、やはり触れた瞬間砂になるが、大量の砂は黄金髑髏を押し潰して生き埋めにした。


「さすがに砂以上に分解はできないのか。足止めの意味はあるな。根本的な解決にはなってないけど」


 俺は着地してから、自分の体を確認する。


 どうも動いていて分かったが、動きにイメージのずれを感じる。


 パワードスーツの性能が上がったのかと思ったが、どうやらそれだけではなかったようだった。


『マスター。エラーを確認しました。何か心当たりはありますか?』


「ああ。ちょっと仙術っていうのを教えてもらった」


『仙術。若干の身体能力の向上が確認できます』


「若干とか言うな。筋トレよりは効果的だと思いたい」


 これでも空腹と格闘しつつ頑張ったのだが、その甲斐はあったようだった。


『効果は絶大です。パワードスーツの登録情報にエラーを出すなど本来一週間では不可能です』


「そいつは嬉しいね!」


『ひとまずパーソナル設定を初期状態へ戻しておきます。より高水準のパフォーマンスが期待できるはずです』


「……え? それってどういうこと?」


『本来このパワードスーツは、肉体の強化処理を行った兵士のための装備ですので。マスターに合わせた負担の少ない調整を施しています』


「は!? パワードスーツ弱くなってんのか!?」


 衝撃的な真実だ。


 だが俺が使いこなせるようになってきたのだと喜ぶことにしよう。


 黄金髑髏は砂の山から這い出してきて、俺を睨みつけて来た。


 ならば、先ほど聞いたばかりのあいつの倒し方を実践してみるしかないようだった。


「テラさん……アレやってみるか。新・必殺技」


『アレ、ですか。了解しました』


 実践のデータを積み重ね、スライムバッテリーの有用性は証明されていた。


 その結果採用された両手に装備した小手が、今回最大の改良ポイントだ。


 最初からどうにも放電の規模が大きくなっていたのは間違いなくこいつのせいだった。


『チャージは完了しています』


「じゃあいってみるか!」


 黄金髑髏の崩れた頭に狙いを定め二つの籠手を前方へと突き出してみる。


 二つの籠手からバチバチと紫電が迸り、加速度的に出力は上がっていた。


 腕がチリチリと震えだすと、ちょっと不安になって来た。


「……なんか球ができてないか?」


『少々、射程距離を延ばす工夫を施しました』


 手の間には青白いエネルギーの玉が出来上がる。


「……! なんかどんどんでかくなってっけど!」


『長距離砲撃を想定しています』


「……なんかすさまじくテンション上がるんだけど!!」


『存分に上げていただければ結構です』


 留められたエネルギーが限界に達したその瞬間、ドンと衝撃が腕を跳ねあげる。


 そして青白い光を放つ光弾がまっすぐ黄金髑髏の頭めがけて飛んで行く。


 着弾の瞬間。その力は解き放たれて爆発した。


「うぃ……!」


 ただその威力は俺の想定を上回っていた。


「キエェェエエ!!!!」


 耳をつんざくような悲鳴が響き、着弾地点にチカチカと雷が迸っていた。


 全身を叩くような音が聞こえ、遅れてやってくる衝撃波を足を踏ん張って耐えながら、俺は立ち昇る黒い竜巻を見上げる。


 静電気なんてものではなく周囲を焼き尽くす雷の竜巻は黄金髑髏を完全に飲み込んでゆく。


 唖然とした俺に、テラさんは言った。


『かなりのパワーアップを実現しています』


 テラさんの声は心なしか得意げだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] テラさんのどや顔が眼に浮かぶ。 すごく嬉しそうでこちらもうれしい
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