黄金ドクロ
振り下ろされた腕の衝撃は思ったよりずっと小さい。
しかし巻き起こった砂塵は、景気よく砂の柱になった。
「は!? 砂! ここは岩山だろう! 」
「そうだった! あいつに絶対に触れるなよ! 触れたものは容赦なく砂になる!」
「重・要・情・報! ほうれんそうは大事なんだぞ!」
「許せ。あいつは周囲から一気に力を吸収して己の物とする。あれでわしの世界は滅ぼされかけたんだ」
「とんでもないことをさらっというよなー」
「怖気づくな。面白くなるのはここからだぞ?」
「……勝算は?」
「当然ある! 一度は勝った!」
宣言して飛び出していったソンは衝撃波を一息のうちに無数に叩き込んでいた。
その手は一切敵に触れていないのに、見上げるほどの大きさの黄金髑髏がのけぞる様は、壮観だった。
触れちゃだめなら、触れないように殴ればいい。
マネできないが、とてもシンプルな答えだ。
掌打の形が俺にも見える。
金色髑髏は六本の手でそれを弾こうとしたが、一撃浴びるたびに重い金属音と火花が散っていた。
「ふん!」
激しい応酬はソンに軍配が上がる。
連打で黄金髑髏が致命的にバランスを崩したところで、ソンの特大の一撃は放たれた。
拳を捻り、突き出された一打だが、捻じりこまれたのは拳だけではなかった。
ソンは周囲から一気に集めた、膨大な力の流れを自分の内にほとんどとどめず、捻りを加えて放出する。
「―――ギィィィ」
黄金髑髏は、荒れ狂う衝撃に体のあちこちをひび割れさせ、片膝をついた。
それはまるで塞き止めた川の水を一気に解き放つような荒業だった。
放ったソンは化け物よりもより化け物らしい笑みで、技の結果を満足げに眺めていた。
「カカカカ! 今ので傷つくか禍月! 貴様さてはあの戦いの直後だな! 貴様とわしはやってくる時がずれたのだ!」
そして黄金髑髏に向かって叫ぶ。
「いいことを教えてやろう! わしには100年の時間があった! 神などおらぬと思っていたが、此処まで粋だとわからぬ! 100年の時はどうやら貴様を葬る好機をわしに与えたようだ!」
「……」
しかし黄金髑髏の傷から暗い炎が噴き出すと、傷はすぐに元通りになってしまった。
そうして今度は六本の腕に炎の鞭を出現させ、振り回して、空一杯に鞭の網を広げてゆく。
「おいおいおい! 嘘だろおい!」
当然それは、打ち下ろされた。
「のあああ!」
そこら中で岩肌が砕けて、岩石の礫が飛び回る。
俺は空から降り注ぐ無数の鞭を、ひたすらかわし続けた。
しかし絶対に避けられない瞬間が訪れる。
これは死んだ!
せっかくパワードスーツを手に入れたのに、最後は変身できないなんて最悪だ。
「ウッ!」
「ボッサッとするな!」
あわやというところで、攻撃を防いだのはソンだった。
鞭は何とかそらしたが、打ち据えられたソンはすさまじい勢いで地面にたたきつけられた。