三人のお客
わさっと揺れる炎のようなドリルヘアーが視線に入り、ニーニャは彼女達を出迎える。
【……いらっしゃいませ】
「ええ。店長さんはいらっしゃる?」
赤い騎士、シャリオはまず店長のダイキチを呼んだが、残念ながら留守だった。
【……すみません。今出ていまして】
「え? 本当に? すぐに戻りますの?」
【いえ……時間がかかると思います】
「……なんてこと。どうやらタイミングが悪かったようだわ。マリー」
そしてもう一方の青い騎士、マリーは気にした様子もなく笑っていた。
「いや。突然だったしな。だいたい、らしくねぇ事するからじゃねぇか? お前がわざわざ自分で案内するなんてどういう風の吹きまわしだよ?」
「うるさいですわね。貴女がこの店を気に入ったと言うからでしょう……始末書も書かせてしまいましたし」
「その割には、最近機嫌がよくないか? お前?」
「そうでしょうとも。なぜかは秘密ですけど! ええ! 秘密ですけれど!」
「……やっぱなんか変なんだよな」
騎士団の制服を着ている二人は、騎士団の所属する貴族のご令嬢である。
そして二人は先客がいることに気が付いて意外そうな声を上げた。
「あら? 貴女は……」
「おう。珍しい顔がいるな。なんでお前がここにいるんだ? ヒルデ?」
どうやら三人とも知り合いらしい。
ヒルデもまた二人に向かって頭を下げた。
「お久しぶりです。シャリオ様。マリー様。ここは勇者様の贔屓の店でして」
「ああ。そうでしたわね。新撰組の方々もこちらに顔を出していると聞いていますわ。ところで……このお店は美容関係に強いお店だと思っていたのだけれど……新選組ではおかしな流行とかはないですわよね?」
「? ええ、こちらの食事はおいしいとは聞いていますが」
「え? 食事?」
シャリオとヒルデの会話は微妙に食い違っていた。
「お二人はこの店の視察でしょうか?」
そして今度はヒルダの方から聞き返す、シャリオがシャラリと手入れの行き届いた髪をなびかせた。
「違うわ。何か面白いものが入荷していないか見に来ただけでしてよ。店主がいないのでは無駄足でしたが」
「いやいや待てよ。店主がいなくてもここに店員はちゃんといるじゃねぇか。なぁ?」
ただ青い騎士のマリーがそう指摘したことで残念な空気がちょっとだけ変わり、ニーニャも咄嗟に答えてしまった。
【はい。大丈夫……です】
「な? おいヒルデ。せっかくだからお前も一緒に見て行けよ。そっちの話も聞きたいしな」
「ええ。わかりました」
【え?】
しかしいつの間にか店にいる全員の視線が集中するのを感じて、ニーニャは内心で悲鳴を漏らした。