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gift from...  作者: 加宮紀伊
1/1

天使からの贈り物

Gift From...

加宮紀伊

 《第0話》

 前置き――――振り返り。




人が生きるには、人が必要だ。

何もこれは、ただ『人』という漢字の由来などを話しているわけではない。

僕はそう考えていた。


――否。僕は今でもそう考えていて、そう信じている。――其の考えを支持している。

彼女もそう考えていた。


人は独りで生きることが出来ず、

人は独りで構成しえない。


――いや、これもまた否だ。この言い方は、少し違う。

独りで構成しえた本来『人』として呼ばれるはずだった生命は、独りで構成しえた時点で、『人』ではないのだ。

『人』とは呼べないのだ。

だから僕は、『人』になるために――いや、この言い方は、まるで僕が『人』ではないみたいだ。

僕は、彼女と一緒にいるためだけに、独りで生きていくことが出来ず。

僕は、彼女と一緒にいるためだけに、独りで生命として構成されることをせず、また、出来なか

った。


僕は彼女が好きだ。

そして、彼女も僕のことを好きでいてくれていると思っている。

僕は彼女を愛している。

そして、彼女も僕を愛してくれていると思う。


細かい嫌いな部分は、確かにある。

でも、其の嫌いを好きに変えるほど、変えられるほど、僕は彼女のことが好きだった。

そして其の気持ちは、今でもずっと変わらない。

これからもずっと変わらない。

例えどんなことがあろうとも、どんなことがあろうとも、この気持ちは変わらない。


僕は、これから、ある出来事をここに記す。

其の出来事は、今でも僕の頭にこびりついて、離れることはない。

今でも夢に見る。悪夢のような出来事。

そして、僕と彼女の仲を、よりいっそう深めることになったであろう出来事。

僕を大きく変えた出来事。

だけど――――注意して欲しい。

これはよくある出来事。

あまたある、ありふれた話の一つ。

また、そんなありふれた出来事であっても、人を変えることが出来ることを、理解して欲しい。

また、忘れないで欲しい。

独りでに生きることが出来ず、構成できない、『人』は、簡単に変わると言うことを。

僕にとっては、悪夢のような――――悪夢そのものという出来事


今。


開幕する。



第0話。完結。




第一話。

《問いの答えは?》

 


 目は、一応開いている。…………はずだ。

 一応と言うのは、それは人間長時間目を開き続けるのは難しいので、瞬きの関係で瞬間的に、再ほどから、幾度となく僕のまぶたは下りていて、閉まっているのだが、それを覗けば、僕の目は一応、何時間も開きっぱなしだ。

でも、情報が、入ってこない。

視覚的には、情報は入っている、光として、静止画像の連続として、映像として、情報は入ってきている。

ただ、脳がそれを処理しようとしない。

光として受け付けようとしない。

静止画像の連続として受け付けようとしない。

映像として、受け付けようとしない。

根本的に言うのであれば、受け入れないのであろう。

拒否しているのだろう。

拒んで、否定しているのであろう。

信じられないのかもしれない。

信じようとしないのかもしれない。

でも、

結局は、


同じことだ。


拒否。不信。

言葉は違えど、

意味は違えど、

今の僕の状態を表すのであれば、どちらも同じ意味を持つ。

………………。

そんな事を脳内で冷静に考えている僕に、僕自身はひどく驚いた。

目の前で最愛の人が死んでいると言うのに。

木目の入った、何がなんだかわからない素材で出来た棺桶に、彼女は入っていた。

いや、それ彼女ではないのかもしれない。

そんな、現実逃避じみた僕の考えは、僕の目から入って来た情報により、ばっさりと切り捨てられた。

――いや、でも信じられない。

だって、彼女が死ぬはずがない。

――それを僕は知っている。

だって彼女がいないと、僕は生きていけないから。

――これは現実。

…………わかっているよそんな事。

でも、それでも信じられないんだよ。

彼女が死ぬはずないんだから。

嘘に決まっている。なぁ、そうだろう?

――何を言っているんだ? 目の前にあるものこそが、現実だ。

嘘だ。

信じない。僕は信じないぞ。

嘘だ。

嘘だ嘘だ。

嘘だ嘘だ嘘だ。

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。

嘘だ。

本当だ。

――僕を置いていった…………?

「何で……何で……なんでだよ。何で僕を置いて逝っちゃったんだよ」



其の後のことは覚えていない。

気が付けば、僕は繁華街を歩いていた。

家に帰るつもりだったのかもしれない。そうじゃないのかもしれない。

死ぬつもりだったかもしれない。そうじゃないかもしれない。

ただ今後、僕は生きていくことが出来ないんじゃないのかと、思っていた。

難しいのではなく、出来ない。

僕は、彼女といるために、

独りで生きていくことが出来ず、

独りで一つの生命として、構成できず、



人であったのだから。



紛れもなく、人間だったのだから。

彼女がいないんだったら、僕は生きていくことが出来ず、構成することが出来ない。

僕という人間を、保てない。

この、古代晴雨(ふるよりせいう)としての人格が、保てない。僕は、僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は。

僕は。

僕は、彼女のいない世界で、生きられない。

生きたくない。

大切なものを失って、目的も、愛情も、愛嬌も、証も、悪意も、善意も、悪徳も、美徳も、遺憾も、意義も、威厳も、意気込みも、依存も、意地も、鬱憤も、敬いも、尊敬も、憂いも、遠慮も、道標も、目標も、生き様も、信念も。

生きがいのない人生を歩んでいることを、

生きているなんていえない。

 生きていると――

 言えない。

 ふと、顔に何かがついたような気がした。

 冷たいそれを、ぬぐってみれば、雪と水の中間みたいな、つまりは、水と雪のような、そんな感じの物体が、僕の指に付着した。

 それは、瞬く間に解けて消えていった。

 儚く、消えていった。

 彼女のように、儚く、瞬く間に、

 消えていった。

 静かに、降り続ける其の雪は、周りの静かさとあいまって、幻想的だった。

「あっれっれー、何をしているのかなー?」

 其の静粛は、そこまで長くは続かなかった。横から聞こえてきた甲高い音は、其の静寂を打ち破るには十分だった。

「君だよ君。そこの君、周りに誰もいないんだから、君に決まっているでしょ?」

 恐らく僕に声をかけているのだろうが、僕はそれに取り合う気はさらさらなかった。

「無視するなんて酷いな……僕はそこまで心が広いほうじゃないからね、怒っちゃうぞ?」

 言動からして、もう関わりたくないと僕は思う。こんなテンションの高い人間は、僕は苦手だ。

 そして、嫌いだ。

 僕はこんなに悲しいのに。

 僕はこんなにつらいのに。

 僕はこんなに苦しいのに。

 何でこいつは、こんなテンションでいられるんだ?

 八つ当たりだとは、わかっている。

 でも、今の僕は、そんな事をわかっていても、自分の感情を制御するだけの余裕を持ち合わせていなかった。

「黙れよ」

 低い、それでいて、静かな声で僕は呟く。

 少し、その人が後ずさる気配がした。僕は、罪悪感を覚え、今の言葉を取り消そうと思ったが、ふと思い立って、やめる。

 これで良いんだ、と。

「いくらなんでもそれは傷ついちゃうなー。古代君?」

「っ!」

 僕は、急に自分の名前を言い当てられたことに驚く。僕は、今までうつむいていた顔を上げると、そこには――――。



 サンタクロースがいた。



「は…………?」

僕は、思わず呟いてから、ふと気が付く。

「あ、そっか、クリスマスなんだ、今日は」

 はは、ははは。そっか、クリスマスか。

 はははは。つまり、サンタクロースは、プレゼントをくれるのではなく、僕から僕の大切なものを奪い取って行ったのか?

 実にくだらない。

「で? あなたは僕から何を奪い取ろうと言うんですか?」

 僕は、目の前にいる、十代後半ほどであろう少女向かって、問いかけた。

「いや、僕は君から何も奪おうなんて、思っちゃいないさ。僕は、君にプレゼントをする側だからねっ! 何でも好きなことを一つでも、叶えてあげるよっ」

「へぇ?」

 面白い。

 僕は言う。

 面白くないのに。

 くだらないのに。

 意味が無いのに。

 僕は、面白いと、それでも言う。

「それじゃぁ、何ですか? 僕を億万長者にしてくれるんですか? 不老不死にでもしてくれるんですか? ………………彼女を生き返らせてくれるとでも?」

 僕は、もう、やけになっていた。

 どうせ、何も変わらない。

 そう思っていた。

 そう思っていた。でも、そんな考えは、少女の発した一言で、簡単に打ち砕かれた。

「うんっ、出来るよ? 君を億万長者にすることも、不老不死にすることも…………君の大切な、昨日、旅立ってしまった、彼女を、また、ここに呼ぶことも」

 ………………え?

「ただまぁ、君は、彼女のいない世界で、億万長者になっても、意味は無いよね。君自身が、其のお金に対する関心が何もないんだからさ。お金持ちは、本当の愛を知らないのと、似たように、愛を失った人間が、億万長者になったとしても、意味は無い。……でしょ?

 他にも、君にとって、不老不死なんて、いらないでしょ? 君にとって、彼女のいない世界なんて、何の意味もないんでしょ? そんな世界に、いつまでも生きていても仕方がない。まるで、かぐや姫のお話みたいだねっ。

 つまりは、君が望んでいるのは、彼女。唯一つなんでしょ?」

「っ……! …………本当に、生き返らせることが出来るのか?」

「やっと、認めてくれたんだ。……いや、この場合は、向き合うと決めたのかな? でも、生き返るか生き返らないかの話ってことは、ただ逃避しようとしているだけか」

 まあ、どっちでも良いけど。

 少女は、僕の問いには答えず、ただそれだけを言った。

「どっちなんだよ!」

 僕は、声を荒げるが、少女は、ただ、黙って、僕に近づいてきた。

 ふわりと、良い香りがしたと思うと、次の瞬間、僕は、少女に抱きしめられていた。

 何が起こったのかは、よく分からなかった。

 何故こうなったのかは、よくわからなかった。

 ただ、僕は、少女に抱きしめられながら、呆然としていた。

「良いんだよ。泣いても。別に、君が泣いても、私は、悲しくなんてならないんだから。むしろ、私は、心配なんだよ」

 ………………。

「私は、心配なんだよ。君って、何もかも、溜め込みがちだからさ。嫌な事があっても、悲しいことがあっても、苦しいことがあっても、つらいことがあっても、溜め込んで、全部独りで解決しようとするでしょ? でも、別に良いんだよ? 抱え込まないで。人に打ち明けることも、大切なことなんだから。泣いて、良いんだよ?」

 少女は、僕の耳元で、彼女の声で、彼女の口調で、それを言った。(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

「あっ………………」

 視界が、にじむ。

「ほら、泣きなよ、いっぱい泣いて、其の後目いっぱい笑ってくれれば、私は、それだけで十分。私は、君の笑顔が好きなんだ。ほら、泣いて? そして、私に、笑って見せて?」

「あっ……ああああぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁあぁぁああぁぁぁあああああああぁぁぁあああ!」

 今までせき止められていた感情が、一気に爆発した。

 ダムが決壊するかのように、涙がとめどなく流れていく。

 其の後、十分ほど、僕は、年下の少女に抱きしめられているという、そんな状況を忘れ、久しぶりに、泣いた。

 泣き叫んだ。

 涙を、流し続けた



「落ち着いた?」

 少女は、僕に聞いてきた。少女の瞳は、ただ純粋に僕のことを気遣ってくれているように思えた。

 夜の公園は、当たり前だが、誰もいなかった。時折吹いてくる風は、僕らの体を冷やしたが、僕がそれを意識することはなかった。

「……うん。あ……ありがとう。それで、其の…………」

僕は、肝心なことを聞こうとして、躊躇した。

「さっき、僕は、意識を失っていたんだよ」

「え――――?」

 唐突な切り出しと、そこから告げられた事実に、僕は驚く。

「君は見たんだろう? 聞いたんだろう? 彼女の声を」

「っ……! …………さっきのは、本当に彼女……なんですか?」

 僕は、最大限勇気を出して、聞いてみた。

「そうだよ」

 しかし、少女は、そんな僕の勇気を露ほどにも知らずに、あっけなく肯定した。

「僕は、これでも天使だからねっ。……死後の魂を、僕の体に定着させたら、姿かたちは違うけれども、中身はその人のまま。つまりは、憑依させることが出来るんだ」

「……じゃあ、何処から、彼女だったって言うんですか?」

「えーと、君に抱きついた時には、もう、彼女だったんじゃないのかな?」

「なんなんですか? 其の曖昧さは」

「しょうがないじゃん、憑依させているんだよ? 僕という体はそのままだけど、中身は彼女なんだからさ。僕が、彼女が何をやったかなんて、覚えていられるわけがないじゃん」

 さも当然の事のかのように言われても、僕はそんな事知らないよ。

「結局、さっき見たのは、君の知っている彼女であっているよ。ほら、よくあるでしょ、入れ替わりってるっ。それみたいなものかな? 途中から、僕の中には彼女が入っていた。わかる?」

「馬鹿にしないでくださいよ。それくらいはわかります」

 僕は、少し不貞腐れたような感じで、そっぽを向く。

 ある意味、照れ隠しなのかもしれない。

 隠そうとしても、僕は笑みを隠すことが出来なかった。

 彼女と会えた。

 僕は、それだけでも、嬉しかった。

 でも。

 それでも。

 会えるだけじゃ、駄目なんだ。

 彼女が隣にいないと、僕は生きていけない。

 彼女の隣にいないと、僕は生きている意義がない。

 彼女が隣にいないなら、僕は生きる意味がない。

 だから。

 僕は、これまでずっと聞こうとしていたことを、少女に問う。



「彼女を、本当に生き返らせることが出来るんですか?」




第一話《問いの答えは?》。

完結。



おはこんにちばんは。または、初めまして!

加宮紀伊です。のりいと書いて、きのいと読みます。

この話は、僕の初投稿の作品となりますので、作品に対する意見などは、バリバリ出してください。

Twitterもやっています。(加宮紀伊という名前で、やっています…というか、投稿するから開設したんですけどね)

作品に対する意見は、そこで出してもらえると、非常に助かります。

不定期投稿になると思いますが…できれば長くお付き合いしてもらえると助かります。

(一応、目標としては、一か月に一度以上の投稿を目指しております。

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