伝説のトル―ストン家
俺の意識が戻って一週間に分かったことを報告する。
この国はアバンテール魔法国という国らしい。この国は、どの国よりも魔法が進んでいて、魔法が良く重要視されるらしい。でも、魔法が絶対というわけでもないみたいだ。
しかし、このトル―ストン家は違う。『伝説のトル―ストン家の歴史』という本にはこう書いてあった。
【トル―ストン家。『大賢者ハイク』と『聖女カイナ』の二人から始まった一族である。彼らは、あまり魔法が発展していなかった昔、その魔法の発展に大いに貢献した。今ある魔法の原点と言われているものだ。そして、未だに使われている魔法も数多く存在するといわれている。
そんな彼らは、貴族の生まれだった。『大賢者ハイク』は男爵令息、『聖女カイナ』に限っては公爵令嬢だった。それにも関わらず、平民、貧民のために、令息・令嬢がする必要すらなかった魔物退治にも進んで参加していたと言われている。
更に、冒険者もしていた。当時、荒くれものがする職業と言われ、忌み嫌われていた冒険者。その冒険者ギルドに登録し、率先して今で言う、S,Aランクの依頼を受けていたと言われている。
貴族に生まれたにも関わらず、生まれ持った才能を世界に生かそうと奔走したのだ。
そんな彼らは今や伝説上の存在だ。その桁外れさに、嘘だと言っている者もいるが、ほとんどの人々が信じている。なぜなら、その祖先と言われているトル―ストン家には、魔法の天才しかいないからだ。それが、彼らの伝説を裏付けているのだ。
今や、本家と分家に分かれたトル―ストン家だが、その強さは申し分ない。
そんな伝説のトル―ストン家では、話せるようになったときから英才教育が始まるのだ。天才たちが努力をすれば、もう誰も太刀打ち出来ないのは明らかだ。王子様や王女様もそんな彼らに手ほどきを受けているらしい。
今やこのアバンテール魔法国は魔法世界の最先端だ。彼らがいれば、この国も安定だろう。私は彼らが築き上げていくこの国を陰から見守って行こうと思う。】
そう、トル―ストン家は魔法の天才しかいないと言われているようだ。そんな中、父は育ち、魔法は絶対だという歪んだ信念を持ってしまっていた。それを、幼いころから子供に教えていたので、彼らも歪んだ考えを持ってしまった。母は元々そういう性格だったのだろう。
更にもう一つ。本にも書かれていたが、トル―ストン家は本家と分家に分かれているのだ。そして、月に一回子供同士の本家VS分家の練習戦をするみたいなのだ。しかし、分家は本家に今まで勝ったことがなく、更には分家でハイルの父が本家に異様なくらい対抗意識を抱いてしまっていたのだ。
そんな中、魔法が少ししかない俺が生まれてきてしまった。それはそれは嫌だったのだろう。家族からしたら俺は、邪魔だろう。表向きは魔力が少ない子が生まれてきてしまったけれど、しっかりと育てているとしているとしているが、実際は家の端っこに追いやって、いないもの扱いをしていたのだ。そんなことを本家の党首が知るはずもなく、ハイルは五年間ずっと家族に虐げられ生きていた。
だから、食事もろくに与えられず、病弱になっていったというのが今だ。よく、耐えたなと思う。執事のロイドやエルたちメイドたちが、助けてくれていたのが大きかったのだろう。
正直、この一家が自分の子孫であることを信じられないくらいだが、事実は受け止めなければならない。
魔法は素晴らしいが、絶対的な存在ではない。極めれば、転生なんてことが出来るくらいのものだが、神ではないのだ。
自分が出来ることは、この少ない魔力を使って、彼らを負かし、魔法が絶対ではないということを教えなければならない。
そう、俺は決意した。