第9話 重大機密電子データ強奪事件 中編
少し間が空いてしまいましたが、投稿です。
多少巻きで進めてるので、いつもより少々雑かも知れません。ご了承ください。
「危ない!!」
唐突にそう叫ばれ、突き飛ばされたかと思うと、先程まで居た場所に鎌鼬が被弾し、俺を突き飛ばした男子生徒がズタボロになった。
驚くより先に、素早くその生徒の周囲に結界を張り、治癒をかけた。
よし、これで少しは持つ筈だ。
負傷箇所の指定をしていないから、どれほどの効果があるかは分からないが。
「逃げろー!!」
「敵襲、敵襲!!」
「キャア!!」
聞き取れた範囲だけでも、此処でかなりの数の者が襲撃を受けているようだ…それも同時に。
チッ…何故、気づかなかったんだ。
…待てよ。
「探知・魔法」
…ああ、そういう事か。意識操作系の魔法具が此処一帯で使われているだけじゃないか。
これなら、アレで何とかなるな。
「無効化、術式系統指定・広範囲」
ふぅ…これで、襲撃に対応出来る者が増える筈だ。
まあ、意識操作系の魔法全てに対する無効化を広範囲で発動したんだし。
地味に魔力を削られたが…流石に助太刀するにも手が足りなさすぎるし。
自力で何とか出来る奴には何とかしてもらいたいんだよ。
はぁ…しっかし、先程までの作業全部、攻撃を避けながらやっていたんだが…カスリもしなかったぞ。
全く、手間かけさせやがって…少しは
「痛い目、見てもらうからな。」
おっと、囲まれた…否、囲んできたか。
「ふっ!」
一息の間に、舞斬華を抜刀し、その場で一回転した。
勿論、首と脚の腱を斬り裂く事を忘れずに。
「……」
断末魔を上げる事なく、首と脚の腱から血を噴き出させながら、糸の切れた人形のように背中から倒れる。
まあ、倒れる前に、何人かピンチな生徒の周囲の敵を舞斬華で斬り捨てたからな。
倒れる頃には、もれなく死体が少なくとも10は増えたぞ。
その後も、魔法で押し負けてる奴や殺られそうな奴の助太刀をしながら、ひたすら斬って斬って斬って斬って斬りまくった。
合間に治癒や結界をかけてやりながら。
まあ、流石に目の前でポックリ逝かれるのは、胸糞悪いからな。応急処置的レベルでしかないが、片っ端からかけてやった。重傷者中心にしたから、軽傷のやつは自力で何とかしてんだろ。一応これでもマギジェリカの戦力なんだからよ。
それに、それ以外の魔法はこういう乱戦時には、味方への被弾の恐れから、使用しないのが鉄則だ。
おかげで、血みどろになりながら、敵をバッサバッサ斬っていく羽目になってんだけどな。
返り血はなるべく掛からないようにはしているが、こうも数が多いと、どうしても掛かってきてしまうからな。血みどろも仕方ないのさ。
…そのせいで、血が駄目なのか、単純に怖いのか、殺気に慣れていないのか…兎に角色んな奴に怖がられるわー驚かれるわーで、非常に面倒くさい。
はあ…あと、5か。
お、丁度いい位置に並ぶなぁ、これは。
3、
「刺突・貫通」
2、
「形状指定・槍」
1
発動。
グシャグシャグシャグシャグシャ、ガァン!
おおっ、上手くいった。
どてっ腹にデカ槍刺さってヤラァ、壁に突き刺さって5人分の脚がプランプラン揺れてやがる。
なんかのストラップみてぇだな。
まあ、兎にも角にも…これで、
「いっちょ上がり、だな。」
壁は後で直すとして…槍を消して、一応首斬っといて…
「探知・広範囲」
紅玉門付近に敵反応無し。
はぁ…やっと潰し終わったか。んー、とりあえず一安心ってとこかな。
次は壁か。まあ、すぐ終わるけど。
「復元」
……よし、終わったな。とりあえず、俺の記憶している壁の状態まで直したが、まあ、あと100年は壊れない程度にしといたからな。問題無いはずだ。
次は、怪我人の治療だな。
「これから、怪我人の治療を行う。軽傷者、無傷の者は手を貸してほしい。1人でも多くの命を救う為に。」
…お、思ったよりも多くの者が同意してくれたな。
「走査後、怪我の具合から怪我人を要治癒者をレベル5とする5段階に分け、レベル5の者から順々に治癒・指定部位で治療していってほしい。しかし、余りにも重傷な場合は、各自で判断し、その場で直ぐさま治療してくれ。他にも血が足りない場合は、治癒・指定部位後に増血をかける等、今指定した魔法以外も使用し、迅速かつ適切な処置を頼む。また、レベル1の者…つまり、自力で移動可能な軽傷者は、その場で治癒せず、体育館や訓練場の方まで急ぎ移動し、中で薬による治療を受けてくれ。そして俺以外は、基本的に二人一組で行動してくれ。これらは魔力切れを懸念しての判断の為、異論は認めない。では、其々対応にあたってくれ。」
…これも同意か。まあ、皆救える命は救いたいわな。
さてと、俺もやるか。
「走査」
右肺貫通の刺し傷に、火矢での火傷、後頭部からの出血…
かなりの重傷だな。
「治癒・指定部位」
……よし、これで完全回復。
否、血までは戻らんからな…
「増血」
お、顔色が良くなってきたな…
これなら、助かるだろう。
それから暫くはひたすら治療にあたった。
…が、敵さんも馬鹿ではないのか、此方に再び人を寄越してきやがった。
「悪い知らせだ。あと10分で敵側の援軍が到着する。重傷者に引き続き治療を施してくれ。俺が浮遊で浮かせて、輸送・高速でさっさと動かす。俺に協力してくれた者は治癒しながら、残りの軽症者と共に急ぎ移動してくれ。俺は、援軍を潰し終わり次第、其方に向かう。」
「それでは君への負担が…!」
「俺は『規格外』…言わば化け物だ。俺の力はいやというぐらい見ただろ?なら、分かるはずだ…心配無用だってな。いいから、早く行け。…俺はもう、誰一人死なせたくないんだ。」
…えっ、今のは、一体…何?
『もう』って…?
…クソ、思い出せねぇ。…まあ、いい。
今はそんな事より、こいつらの避難が先だ。
「…!?…わ、分かった。行くぞ!」
『おう!』『はい!』
やっと納得してもらえたか…やれやれ、ド真面目な奴はこれだから面倒くさいんだ。名も知らない奴の世話焼くなんて…ホント馬鹿な奴。
はあ、じゃ、さっさとかけときますかね。
「浮遊・大人数」
「ノーマルの加速で並走出来るぐらいにするから、予め発動しておいてくれ。……輸送・高速」
ま、一応発動まで少し待ってからかけてやったからな。何とか並走出来るだろう。
はあ…これでもう安心だな。
あーあ、ヤバイな、敵さん後1分でご到着じゃないか。
んー、まあ、何とかなるか。
味方がいないなら、魔法も使い放題だし。
1分後…
…ふぅ、何とかなるもんだな。ま、一人一人は弱かったからな。数が多いだけで。
大方、陽動のつもりなんだろうが…面倒な事に変わりはない。
ん?ああ、もう終わったよ。
今足元で数人呻いてるし。大多数の奴は死亡…てか、即死させたから、辺り一帯濃い血の臭いが漂ってる。一応、後の事情聴取の時にでも大いに働いてもらわないといけないからな、数人は生かしてる…瀕死だが。
「光束・雁字搦め、結集、檻・無効化」
瀕死の奴を光の鎖で雁字搦めに拘束し、一箇所に集めた死人と一緒に、檻に入れた。
一応、口封じに殺されたり、脱走したりしないように無効化を付与しておいたけど、無効化を無効化する魔法具でも使われたらどうしようもないから、気休めにしかならないな。
あとは檻を…
「外へポーン!」
馬鹿力で投げ捨てて…ドガァン!!
門戸を閉めて…施錠!
一応、施錠が自動で掛かるが…
念の為、その上から施錠を重ね掛けして…
「壁・透明化」
門と外との間に不可視の壁を作り出した。
さてと後は、とりあえず中に入って…
「結界・大規模、常時発動」
常時発動型の大規模結界を張った上で…
「分身」
分身をいくつか作って、体育館や訓練場へ加速・光、減速で向かわせた。
あららぁ、こりゃ、ダメだな。
カオス過ぎてまるで聞き取れないが、生徒達が不安等で一時的に恐慌状態に陥ってる。
先生達も何とかしようとしているものの、数の差があり過ぎてまるで意味を成してないな。
んー、ここは多少士気の上がる言葉と共に状況報告だな。
はぁ…本当に手間のかかる連中だぜ。
おっと、その前に鎮静を掛けて…いや、掛けながらの方がいいか。
話を遮られるのは、嫌だからな。時間が無駄になるし。
よし、…鎮静。
「皆、落ち着いて聞いてくれ。今マギジェリカは謎のテログループによって襲撃を受けている。目的は明らかではないが、此処には貴重な資料やデータも眠っている為、その強奪もしくは閲覧、公開等の可能性が高い。此処にいる皆には今張っている結界の中で待機していてほしい。…万が一、結界が破られるような事があれば、自己防衛を最優先とした戦闘をしなければならなくなるが…」
一度言葉を切り、皆を見回しながら再び発する。
「さて…此処で皆に聞く。我らは何の為に此処で学び訓練を受けているのか。…それは、このマギジェリカでの戦力となる為、そして何より我ら自身が強くなる為だ。皆は、此処で恐怖に震え、騒ぎ立て、犯人の思惑通りになる事を許して良いのか?正直に言えば、今の我らでは力不足だ。犯人を取り押さえる事など夢のまた夢、足手まといだろう。…それでも、我らは我らの、マギジェリカ生としての誇りと身の安全を守る為、此処で立ち上がるしかないのだ。我らは我らに出来る事をするそれが今の我らの最善の選択だ。…さあ、我らは我らの為に、戦うぞ!男も女も関係ない!戦場ここでは生き抜いた者勝ちだ!準備はいいか?」
少し間を開け、大事なお知らせを挟んだ。
「此処で、皆に1つお知らせだ。…規格外が規格外の役割を果たす為、此処には俺の分身しか残さない。分身の戦力は並より少し上なだけ。主に本体の俺に此処の現状を伝達する役目を担っている。その為、戦闘時の状況判断等は各々に任せる。…話は以上だ。」
スゥ…と息を吸い込み、腹から思いっきり声を出した。
「絶対に生き残るぞ!!」
拳を天へ突き上げ、さらに皆を煽った。…少しでも多くの者が、マイナスな感情を吹き飛ばせるように。
『オゥ!!』
それが功を奏したのか、身体中に戦意を漲らせた生徒・教職員らは拳を突き上げ、雄叫びを上げた。
現時点をもって、本格的に戦いの火蓋が切って落とされた。
その頃、本体の俺は分身にその場を任せ、移動を開始しようとしていた。
先に結界を張った為、それを壊さないように、行くしかないな。
数歩後ろに下がり、勢いよく門に向けて走り出した。門の1メートル程前で、タイミングよく右足で一歩力強く地を蹴り、飛行で門を飛び越えた。幅跳びの背面跳びをイメージしながら。
着地する数メートル前に空中で体勢を整え、正面を向いて、しゃがみ込むように静かに着地した。
そして、そのままの体制で直ぐさま両手を地面につけ、
「探知・大規模、位置把握、指定時間毎・自動更新」
敷地内全体に大規模な探知をかけた。
同時に、敵と生徒・教職員らの位置を把握し、それが約0.01秒毎に更新されるように設定した。
これでやっと効率よく敵を屠れるな。
その高性能さのお陰で、1分と経たないうちに、エンカウントしたが…
…チッ、さっきの奴らより地味に強い奴が多いな。
じわじわ数も増えてやがる。
はぁ…仕方ねぇ。
5割、アイツに人格変換だ。
それが今の俺の、自力で戻せる限界。
超えれば、無差別殺人兵器の出来上がり。
…これはある意味賭けだ。
ま、屠る敵がいる時だけ、ちょい出ししていくって感じにしねぇとな。頭叩くまでに、こっちが疲労で潰れちまうし。
「…人格変換、50%」
これより、鮮血と紺桔梗の瞳、5割増しの戦闘力に早変わりってな。
半無差別殺人兵器がお相手致そう。
左手に鋳造にて、雷撃剣を製作。
敵反応あり。
3秒後に右から5、3.5秒後に左から6、5秒後に前から7、5.5秒後に背後から3。
右に5、左に6、前に7、背後に3、斬撃を飛ばす。
所要時間予測、3秒。
問題なし。
開始
1、2、3
終了
所要時間、3秒。予測に誤差なし。
目視可能範囲内に敵反応無し。
「人格変換、一時解除」
ふぅ…これだとあっという間過ぎて、殺った感がまるで無いんだよなぁ
まあ、こうでもしないと葵達と合流出来なさそうだからな。
ちなみに、さっき俺がやったのは、舞斬華で右と前に斬撃を、雷撃剣で左と背後に雷撃混じりの斬撃を飛ばしただけ。
斬撃は飛ばせるだ。剣に長けた者なら誰でも出来る芸当だ。敵味方入り乱れた戦闘で無い限り、幾らでもやれる。
返り血はなるべく浴びないようにはしたものの、勢いよく飛び出してきた敵さんは、その勢いのままこっちに突っ込んできたからな。自分が斬られた事に気づかず、空中で胴体が真っ二つに分離させ、血を撒き散らしながら、敵同士で衝突。余りの速度に身体が耐えきれず、衝突した者はもれなく衝突箇所から肉塊に。
ど真ん中にいた俺は斬撃を放って直ぐに上へ飛び上がり、飛行を発動し、事態が収まるまで空中で待機していた。
その離脱時に地味に細かい血飛沫がかかったからな…
結果として、乾いてきて赤黒く変色した血の上に、鮮血の小花が咲き乱れた。
はあ、早く清潔化かけたいなぁ…
まあ、どうせ直ぐに返り血塗れになるんだし、此処は我慢するしか無いかな。
俺は死臭や血の匂いぐらいで、嘔吐・気絶するような奴じゃないからな。
むしろ嗅ぎ慣れてる。人殺しは…ひだまりの家の周辺の森に侵入した不審者を始末して以来だからな。
最後に始末したのは、冬季休暇の頃だから…約4、5ヶ月ぶりぐらいか?
割と久しぶりだったが…少し腕が鈍ったか。
いや…少しどころか、人格変換を発動させてる時点で大分鈍っているんだろう。
ま、あと3時間ぐらいは余裕で使えるからな。ちょい出しを続けられれば、消耗も少なくて済むし。
とりあえず今は…人命救助もしつつ、敵さんをじゃんじゃん殺りますかね。
それからというもの、俺は敵を屠りつつ、人|(生徒・教職員など)の反応を探し、固まっているところにはそのままでいるように、ばらけているところには結集をかけ固まらせてからそのままでいるように指示をしながら、結界をかけてやり…
また、一人きりの奴には分身をつけ、急ぎ近くの生徒・教職員と合流するように指示をしながら、移動式の結界を張ってやり、動きながらでも結界での防御が出来るようにし…
…というのを其々のところに分身を置き、大まかな概要を説明しながらこなした。
授業中の教室内にも分身を置き、大まかな説明とその場での待機を指示した。
何処に行こうとも、この格好では悲鳴を上げられたり、驚かれたりしたものの、鎮静をかけながら、あの言葉で説明し鼓舞すると、不思議な事に皆んなして、戦意を漲らせるのだ。
…別に洗脳系の魔法は使っていないぞ?
なんか変に目がキラキラ…否、最早ギラギラしていたぐらいで…そんな目で此方を見てくるものだから、地味に怖かったな。
あとは…そもそも今日は学内外見学会の初日だ。
確か予定では、時間的にそろそろ第1グループが食堂にて昼食を食べ始めたところの筈だ。
…って訳で急いで食堂に向かい、そこにいる生徒全員に大まかな概要説明とそのまま待機を指示し、後からやってくるグループにもそれが出来るよう分身を置き、その場を去った。
まあ、去る前に、ノーマルな結界を張ると後続のグループが食堂に避難できない為、中の者が味方と判断した者だけ入れる識別機能を搭載した結界と共に、分身を新たに2体増やして置いておいた。
万が一、味方に変装した敵を入れてしまった場合の敵排除の為に、敢えて数を増やしたが…
ああ、全く…本当に面倒だった。
そもそも、分身の維持の為の魔力は、作成時に分身の身体に込めた分しか持たせてないから、そう長くは持たないんだが…
通常より少し多く込めてしまってな、分身の背が俺より10cm程高くなったんだよ…
…それが、同学年の奴の平均身長レベルでな、地味に精神ダメージが…
はぁ…早く身長伸びねぇかなぁ…
俺、葵より背低いんだぜ?初袮と玲音は葵と同じかそれ以上。…出会った時からずっとこの身長差は変わってなくてな、俺も伸びてる筈なんだが、どうも伸びが遅いようで…
…そんな感じの気分で立ち去ろうとしたらな…一部の奴に跪いて祈られたんだよ。
…俺は、神でも何でも無いんだが?
いや、まあ、なんか『ご無事で』とか、『ご健闘を祈ります』とか言われた訳よ。
そこまでならまだ分かるけどな…『鮮血の天使様』ってなんだそりゃ、ってならねぇか?
頰を痙攣らせながら、懸命に笑顔を作って、手を一振りしてみたけどな…
…歓声か悲鳴かよく分からん声を上げるなよ。怖いわっ、大体俺は…天使でも何でもねぇ…
ただの規格外、それも内に殺人兵器を飼ってる化け物だ。
それに…細かい所に突っ込むなら、俺の今の格好からして、鮮血より朱殷の方がいいと思うんだが。
返り血が乾いて、赤黒くなった服着てるんだし。
まあ、どう呼ばれようと俺が俺である事に変わりはないんだ。
害がないなら、放っておくだけの事。
さて…そろそろ頭を叩きに行こうか。
新魔法が多過ぎて、地味に大変でした。
後編で、頭潰しと後始末に入り、この事件は終わりです…その予定ですが、終わらなかったら、もう一話追加する事になります。
グロが割と多かった今話…どうでしたか?
地味に色々と伏線とブラフを混ぜたつもりですが…忘れず回収できるよう、頑張ります。
以上、作者からでした。




