新聞の求人欄
「隅田くん、いらっしゃい!どうぞ入って」
「お邪魔します」
「あれっ、ヤスくんと一緒じゃないの?」
「えっ、新聞の求人欄見てない?」
「見てないけど」
ヤスくんは条件に合う仕事がなかなか見つからなくて悩んでいたが、今日やっと見つかったのだろう。
求人への応募の作業をしていて、ここに来られないのなら仕方ない。
とりあえず、良かった。
「新聞持ってきたから、ちょっと待って」
リュックのチャックを乱暴に開け、小さく折り畳まれた新聞を取り出した。
そして、白い絨毯の上に広げて、音を立てながら新聞を捲ってゆく。
「これだよ、ここを見てみて」
人差し指で示した先には見慣れない光景があった。
「休人欄?」
「そうだよ。ここにヤスの名前が書いてあるだろう」
「休人って何?」
「そっか、まだ世間に馴染んでないもんな。簡単に言うと肉体共々この世から消えて人間を休むことだよ」
「そ、そうか」
半年後に自然とまた現れるらしいが、ヤスの悩みも、この世の中も、この先の未来も、恐ろしいとしか言いようがない。